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林檎の香りがするお店

第1章 どしゃぶり雨が惹き寄せた

照れたように額をかいて、

『このカードが貯まったら、サービスしてあげる』

カードの下には30%OFFの文字

「なるほど。」
勝手に納得していると、

あ、違うよ?

『空ちゃんは、これじゃないから。』

大野さんの黒いボールペンが30%OFFを消した

固まる私に、

『だから、また来て。』

言われるがまま、はいはいと店を出ると

暗かった空は晴れかけていた

ポケットに入れたカードを取り出してよく見ると

おしゃれな鳥の絵の横にある名前には

【笹原 空】の文字

繊細かつ力強い綺麗な字は大野さんをよくあらわしていた

思わず緩みかけた頬をきゅっと戻したら、

足取りが軽くなった気がした。

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