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高校生だってムラムラする。

第4章 噴出

 気が重かったけれど、私は学校に行った。夏期講習を無断欠席すれば、学校から自宅に連絡されてしまうのだ。母親にバレようものなら、何を勝手にとこっぴどく叱られてしまうだろう。

 外は暑かった。まだ早朝だというのにじりじりと日が照っていて、すでに汗が一筋二筋額から流れ落ちてくる。それを手の甲で拭い、私は駅へと急いだ。
 時間通りに最寄り駅まで辿り着いたのはよかったのだが、私は回れ右で走り出したくなった。
 プラットホームにいたのは、よりにもよって黒崎だった。彼は私に気が付くと片手を上げて挨拶し、そのまま手招きをした。

「おはよ」
「おはよう」

 彼の態度は至って普通だった。気まずそうでもないし、何かを気にしている素振りもない。私ばかりが悩んでいるかと思うと、何だか腹立たしささえ感じる。

「今日の午後、暇?」
「特に何もないけど」

 そう答えると、黒崎は若干緊張した面持ちで口を開いた。

「……俺の家、来ない? 両親が旅行に行ってるんだ」

 私はすぐに反応出来なかった。胸がかき乱されたような気分になった。ビックリしすぎたせいで、逆に冷静なままかもしれない。
 私が次に驚いたのは、真っ先に思い浮かんだのが今日身につけているの下着のことだった、という事実である。幸いにも、ボーダー柄でパステルピンクのレースのついた、上下がきちんと揃ったセットだった。

 両親が不在の彼氏の自宅に招かれる、ということはつまり
その、そういうこと、だろう。
――いわゆるフラグ、というやつである。
 もう高校生だ。いつの間にやらどこで身につけたか、それなりの知識もある。まったく知りませんでした、としらを切るつもりはないにせよ、包み隠さず口にするほど慣れてはいなかった。
 最後まで至らないにしても、完全な密室二人きりの状況になる。それなりの行為は覚悟しなくてはならない。キス、いや、それ以上……。

 興味がない、と言えば嘘になる。不安と、ほんの少しの後ろめたさに、ごくりと生唾を飲み込んだ。

「じゃあ、講習終わったら、廊下で」

 ほっとしたような彼のため息が隣から聞こえた。

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