え？元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか！？
第5章 想い、あふれる
夕謡はひ弱な子供だった。大きな病気に罹ったことはないが、しょっちゅう熱を出しては学校を休んでいた。
いじめられはしなかったが、内気でもありなかなか同級生と打ち解けられなかったのだ。
そんな夕謡が、唯一自然体でいられたのが従妹の詩菜と過ごす時間だった。
ある日のこと。些細な伝達ミスから夕謡は友人とその親たちで遊ぶ予定の、日付が前倒しに変更されたのを知らされないまま当日を迎えた。ようは、誰もが誰か別の人が夕謡に日程変更を伝えた、と思っていたのだ。
翌日そのことを知った夕謡だったが、両親には中止になったのだと伝えた。家族ぐるみで遊ぶ予定だったとは言え、友人たちの家族と夕謡の両親との関係もまた深くはなかったから、両親は今も真相を知らない筈だ。
それは、友人たちとの間での夕謡の立ち位置を如実に思い知らされる出来事だった。付き合ってくれてはいるけれど、夕謡はあくまでおまけ。友人たちも皆良家の子息だが、なかでも九重財閥令息である夕謡を無碍にはできないから、仲間に加えてくれているにすぎない。
七歳にして夕謡は聡明な――そして繊細すぎる子供だったから、そのような機微を敏感に察することができたのだ。
それから数日後、詩菜とその家族たちと遊んだ。詩菜の家族たちは、夕謡がうまく質問に答えられず黙っていてもじっと答えを待っていてくれる。夕謡のペースに合わせてくれる鷹揚さがあった。
「夕謡お従兄《にい》ちゃん、どこか痛いの？」
詩菜が心配そうに訊ねてきて、夕謡は驚いた。詩菜たちの前では、普段通りにしていた筈だったのに。
「痛そうにみえる？」
「うん」
きっと、辛そうな面持ちをしていたのだろう。それを、六歳の詩菜は「痛そう」だと受け取ったようだ。
夕謡が「大丈夫」と答えると詩菜はそれ以上追及してこなかったが、翌週、詩菜のほうから夕謡を訪ねてきた。そして、一輪の花を手渡されたのだ。
「日曜日にね、海のおじいちゃんちに行ったんだよ。この花ね、そこで見つけたんだ。おじいちゃんが、痛いのに効くって言うの」
いじめられはしなかったが、内気でもありなかなか同級生と打ち解けられなかったのだ。
そんな夕謡が、唯一自然体でいられたのが従妹の詩菜と過ごす時間だった。
ある日のこと。些細な伝達ミスから夕謡は友人とその親たちで遊ぶ予定の、日付が前倒しに変更されたのを知らされないまま当日を迎えた。ようは、誰もが誰か別の人が夕謡に日程変更を伝えた、と思っていたのだ。
翌日そのことを知った夕謡だったが、両親には中止になったのだと伝えた。家族ぐるみで遊ぶ予定だったとは言え、友人たちの家族と夕謡の両親との関係もまた深くはなかったから、両親は今も真相を知らない筈だ。
それは、友人たちとの間での夕謡の立ち位置を如実に思い知らされる出来事だった。付き合ってくれてはいるけれど、夕謡はあくまでおまけ。友人たちも皆良家の子息だが、なかでも九重財閥令息である夕謡を無碍にはできないから、仲間に加えてくれているにすぎない。
七歳にして夕謡は聡明な――そして繊細すぎる子供だったから、そのような機微を敏感に察することができたのだ。
それから数日後、詩菜とその家族たちと遊んだ。詩菜の家族たちは、夕謡がうまく質問に答えられず黙っていてもじっと答えを待っていてくれる。夕謡のペースに合わせてくれる鷹揚さがあった。
「夕謡お従兄《にい》ちゃん、どこか痛いの？」
詩菜が心配そうに訊ねてきて、夕謡は驚いた。詩菜たちの前では、普段通りにしていた筈だったのに。
「痛そうにみえる？」
「うん」
きっと、辛そうな面持ちをしていたのだろう。それを、六歳の詩菜は「痛そう」だと受け取ったようだ。
夕謡が「大丈夫」と答えると詩菜はそれ以上追及してこなかったが、翌週、詩菜のほうから夕謡を訪ねてきた。そして、一輪の花を手渡されたのだ。
「日曜日にね、海のおじいちゃんちに行ったんだよ。この花ね、そこで見つけたんだ。おじいちゃんが、痛いのに効くって言うの」
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