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え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第14章 白昼堂々、教室にて

「高等部からの詩菜は知らないけれど、蓮路さんはわたしと会う前は流しのクリフェラ師をしていたの」
「流し……?」
「特定の奉仕相手をもたないことよ。……そして、対価に相手の体を要求することもあった」
「……っ」
「蓮路さんはクリフェラが巧いって有名だったの。実際、彼のクリフェラを受けて虜になってしまった女の子も多いと言うわ。――だから」

 依里子はしっかりとわたしの瞳を見つめて言う。

「クリフェラが巧くて、SEXもすることになれば私だって落ち着けると――私は奔放にならずにすむと思った。人一倍、性欲が強い私でも、ね」

 自嘲する依里子に、わたしは訊ねた。

「でも依里子、処女だって……」
「それは、蓮路さんがそういう性癖に目覚めたからで……この話とは関係ないわ。ねぇ詩菜、あなた、まだ夕謡さんのこと、好き?」
「……っ」
「私は正直、どんな事情があったにせよ、詩菜に無理を強いた夕謡さんを許せないわ。でも詩菜は……詩菜はどうなの?」

(わたしは――わたしはきっと、子供の頃からずっと――)

 子供の頃? 思考に上った言葉に、わたしはひっかかりを感じた。

『子供の頃、兄さんと結婚の約束をしたんだって? ぼくはクリフェラ係にしてくれるって言ってもらえただけで嬉しくて、それをずっと待ってたのに』

 夕謡はそう言っていなかったか。わたしは必死に思い出そうと頭を巡らせた。子供の頃、わたしは――

「……あ」

 閃くものがあった。確かに子供の頃、そんなことを夕謡に言った気がする。そして燈多にも。
 わたしにとって、クリフェラ係とは――

「依里子。わたし……」
「詩菜」

 わたしは依里子をしっかりと見て言った。

「わたし、夕謡が好き。燈多お従兄《にい》ちゃんだって嫌いじゃない。だけど、もっとうんと夕謡が好きで――きっとずっと前から……特別で……っ」
「ええ、詩菜」

 依里子がわたしの手をぎゅっと握ってくれる。わたしも決意を込めて、握り返した。

「……わたし、帰るね。夕謡に好きだって言って、ちゃんと話し合ってみるよ」

 わたしがそう告げると、依里子はやさしく微笑んでくれたのだった。

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