地味に甘い君
第31章 孤独の落とし穴
真っ暗な中に…
自分だけが立っている。
そんな夢は…母が死んでから毎晩のように見ていた。
事故死――――…
だった。
雨の日の交差点…
買い物帰りの母を高齢者の車が突っ込んで来た。
避ける暇なんかなかったそうだ。
中学2年の梅雨時…
担任の先生から帰宅を促されて…母の死を知った。
雨の降り続く中…急いで病院に向かう俺は…母の姿を見るまで…何かの冗談だと思っていた。
しかし、霊感室に通された時点で「現実だよ」と、もう一人の自分が囁くのが分かる。
――――間違いなく…母だった。
擦り傷――――…青アザ…
それ以外は綺麗なものだったが…
母の顔は青白く…もう二度と目を覚まさないだろうと……パニック状態の頭でも分かったくらいだ。