地味に甘い君
第34章 磨り減る絆…
「もう少し…ゆっくりしたかったなぁ~」
「十分満喫しただろ!」
赤羽は車のハンドルを握りながら、もっと遊びたかったと口を尖らす。
ダラダラと目的のない旅をしているわけではない俺的には…早く用事を済ませたい、と言う気持ちは大きい。
「そろそろ――――ほら、あそこの寺…」
ナビにも寺の名前は表示されていたが、つい知っている道や建物を見ると「あれが、これが」と、言いたくなる。
「随分…閑散とした…立派なお寺だね?都心では考えられない…この無駄に広い土地とか!」
「これでも…俺にとっては都会よりの寺だと思ってたけどな」
県庁通りにある父方の親戚の寺に母のお骨はある。
母方の方はもっと田舎の山の中にある寺だったから…そこに比べたら、ここの寺は都会の中の一等地だと俺は思っていた。
「県庁通りでこんなに土地取れる寺って――――…どんだけ金回りいいんだよ」
「物価が違うんだよ…」
寺の駐車場に入ると、ナビも案内が終わったと告げる。