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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

☆m


「お前、最近なんなの?」


やけに冷たい言い方になっちゃったけど、これでも俺的にはまだかずのこと信じてたんだよ。


ここでごめんの一言でも返ってくれば俺は兄ちゃんとしてグッと飲み込んでやろうと思ってた。


それなのに返ってきたのはやっぱり。


「…うるさい」


それはそれは弱々しい声だったけど、言動も態度も変わらないっつーのは改める気はないってことか。


「いい加減にしろよっ…!」


どれだけ馬鹿にする気だ、とさすがの俺も怒り心頭で。


これは面と向かって一度ガツンと言ってやらなきゃ気が済まない。


兎にも角にもまずは顔を出しやがれ、と掛け布団を剥ぎ取るため思いっきり引っ張れば。


「このやろっ………うわっ!」


思いの外簡単にペロンと捲れちゃって、布団もろとも勢いよく吹っ飛んだ。


「痛ってぇ……」


考えてみたらかずとの力差なんて歴然。


かずが俺に勝てるはずないのに何をムキになってんだろう。


床にぶつけた肘を摩りながら、守るものがなくなって小っこく丸まってるかずの元へと近づいた。


ベッドの端っこにきゅっと身を縮めているせいで、とても俺と同じベッドにいるとは思えない。


「なぁ、かず。なんでそんな怒ってんの?」


壁側を向いているかずの後頭部に呼び掛けても、頑なに拒否。


「俺、なんかした?」


昨日のアレってそんなにマズイ?


俺の周りなんて高一くらいからあんな話題ばっかだったけど。


もし仮にそれが引き金だったとしたって、この態度はもっとずっと前からなんだから。


他にも不満だの何だのあんじゃねぇの?


「なぁ、俺はお前の兄ちゃんだろ?」


隠し事なんかしないで何でも話してよ。


俺はいつだってかずの味方なんだから。


「兄貴、だろ……」

「え…?」

「兄貴だって言うならっ…」


ようやく返ってきた言葉は途切れてしまって、待ってみてもその続きが聞けることはなくて。


そのうち母ちゃんの呼ぶ声が聞こえて、後ろ髪を引かれつつも仕方なく一人家を出た。



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