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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

◆c


翌朝、いつものように食卓に降りて行くとかずの姿がなかった。


「母ちゃんおはよ。かずは?」

「あ、おはよ。和ねぇ、具合悪いんだって」

「え?マジ?」

「起こしに行ったけど今日は休むって」


エプロンを外しつつ二階をチラ見しながらそう言う母ちゃん。


休むって…そんな具合悪いの?


昨日ちょっと怒らせたのが尾を引いてんのかな。


いやそんなまさかね。


「俺ちょっと見てくる」


昨日のかずの様子に若干責任を感じ、母ちゃんに『お願いね』と肩を叩かれてかずの部屋に上った。


ノックをしても昨日と同じように返事はなく。


「かず、入るよ」


ドア越しに小さく投げかけドアレバーをそっと下げる。


一歩足を踏み入れると、ベッドにちんまりと丸まったかずの姿が。


けれど、頭まで被った布団のせいでかずの顔は確認できない。


「…かず?大丈夫?」

「…来るな」


そろりとベッドに近付きながら問い掛けた時、くぐもったその声が確かに聞こえた。


「え?」

「来るなっ…!」


すっぽり被った布団に更にぎゅっと力を込めて縮こまるかず。


やけに強がってみせてるクセに、今にも消え入りそうなその声。


こんな時でさえ俺への反抗期は続いてるってワケか。


「なぁ…熱でもあんの?」

「…うるさい」

「うるさいって…お前さぁ、もしかしてまだ昨日のアレ怒ってんの?」

「…うっさいばか」


最近のかずの俺に対する態度が日に日に冷たくなってんのは十分感じてた。


だけど、さすがにこれはないんじゃない?


人が心配して様子見に来てんのに『うるさい』の一点張りって。


黙ってもぞもぞと身動ぐかずを見てると、今までのイライラが無性に募りだして。


「…おい、かず」


思ってたより低い声が出てしまったけど、そのまま続けた。

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