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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第3章 秘密の楽園 2

◆c


久々に一人で乗った電車から降り、出口から続く人波に合わせて歩く。


いつもの満員電車に押し潰されながら、かずのことをずっと考えていた。


なんであそこまで俺を拒否するようになったんだろう。


昨日のアレだってそこまで怒るようなことじゃないと思うんだけど。


兄ちゃんとして言ってやってんのがそんなに癪に障る?


さっきのかずが放った捨て台詞が脳裏に蘇る。


”兄貴だって言うなら…”


なに?兄貴なら俺はどうしたらいいわけ?


もう全然分かんねーよ…


はぁと溜息を一つ吐いた時、後ろからポンと肩に重みがかかった。


「よぉ、おはよ。あれ?今日ひとり?」

「あ、おはよ。うん、かず具合悪くてさ…」

「ふぅーん。あ、そういやさ、かずくん部活入ったらしいな」

「えっ?」


並んで歩いていた翔ちゃんのその言葉に思わず立ち止まってしまい。


後ろから次々に肩にぶつかられ、翔ちゃんに腕を引っ張られた。


「ちょ、何してんの。え、つーか知らねぇの?」

「うん、聞いてない…」

「ふはっ、何なんだよお前んとこの弟!」


可哀想なくらい一方通行だな、なんてからかわれてるけど、今の俺にはそれに返す言葉が見つからない。


…全然知らないんだけどそんなの。


かず、どういうつもりだよ?


「まぁでも合ってんじゃね?演劇部」

「っ、え、演劇部!?」

「らしいぜ。うちの後輩から聞いた」

「へ、へぇ…」


かずが演劇部?
なんで?そんなの興味あったっけ?


「あ、でもさ、あそこの部長ちょっとクセあるから気ィつけた方がいいかもな」

「え?なにクセって」

「ん〜なんつったらいいのかな…
何考えてっか分かんねぇっつーか…」

「えぇ?なにそれ」


眉間に皺を寄せて唸る翔ちゃんの横顔を見て、言い知れない不安が募る。


顔も名前も知らないやつだけど、そんなやつの居るとこにかずは入部したのか。


大丈夫かなあいつ…

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