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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第3章 秘密の楽園 2

☆m


これが過保護ってことなんだろうな…


放課後にやって来たのはとある部室の前。


普段は立ち入ることのない階で、コソコソにそわそわまでついて余計に挙動不審。


もしかずにバレたらまた怒られるんだろう。


そう分かっているのに、なぜだかかずのこととなると抑えがきかない。


「誰かいるのかな…」


コソコソと入口から覗いてみたけど人のいる気配がしない。


今日は練習してない日なのか…


良かったような残念なような、混ぜこぜの心情の中ホッと胸を撫で下ろした時。


「うちの部に何か用か?」

「ひぃっ…!」


真後ろに突然人の気配を感じて思いっきり身体が跳ねた。


いつの間にこんな近くにいたのだろう。


全然気付かなかった…


振り返ったそこにはこんがり日焼けした小柄な男子生徒。


だけど踏み潰された上履きの先が青色で俺より先輩らしい。


見た目はふにゃりと穏やかそうだけど、醸し出す雰囲気には得体の知れない圧がどこかにあって。


なんというか…


”何考えてるか分からない”


翔ちゃんの表現とピタリと一致して直感的にこの人だと思った。


「おい」

「ぅあ、はいっ!」


いっけね、上から下までじろじろと見過ぎちゃった。


慌てて背筋を伸ばし向き合えば一瞬眉を顰める素振り。


「あのっ、俺はかずの兄で…今日学校休んでて、それでっ…」


万が一の時にはこう言おうと授業中ずっと考えてた言い訳。


果たして通用するかは分からないけど、とりあえず全くの部外者じゃないってことで。


いや、部員の兄弟なんて部外者も当然なんだけど。


だけど「あぁー」なんてその人は納得したように頷いてくれた。


「お前あいつの兄貴か。全然似てねぇな」

「…かずは母ちゃん似で俺は父ちゃん似だから」


心の中で溜息つきながら、今まで何百回と言ってきたことをまた説明。


「ちゃんとあいつから連絡来てんのにわざわざ来てくれるなんていい兄貴だなぁ」

「え、あ…まぁ…」


いい兄貴だなんて全然そんなことないのに。


「なぁ、ちょうどいいからちょっと頼み聞いてよ」

「え?」

「あいつ裏方希望っつって表出たくないらしいけど絶対演者に向いてると思うんだよ」

「…はい?」

「兄貴から説得してくれ。かずにやってほしい役があるんだ」

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