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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第3章 秘密の楽園 2

☆m


「別に面白がってなんかない」


かずの瞳がちゃんと俺を映しているうちに。


またさらりと躱されてしまう前に、どうしてもこの誤解だけは解いておきたい。


「かずにやってほしい役は部長さんに聞いてた。だけどそれを面白がって演者してみたらって言ったわけじゃないよ」


逸らしてしまおうか、どうしようか。


迷っているのかかずの瞳が一層揺らめき立つ。


「単純に…そんなにもかずに才能を見出してくれているのであれば、やってみた方がいいんじゃないかって思っただけで」


そんな目とか、下げた眉とか。


俺、かずのその表情弱いんだって。


手を捕らわれビビったのか、怒りの色はすっかり消えていまやまるで捨て犬状態。


飼えないって事実を伝えたくてもその目が許してくれないような、ついポロッと『うち来る?』なんて言いたくなっちゃうような。


その顔をされると余計なことまで口走ってしまうから怖いんだけど。


一瞬の沈黙。


『まだ続きがあるんじゃないの?』って言わんばかりのそれに、かずの腕を握る手にじわりと汗が滲む。


「だから…」


結局…


悪い予感はしていても我慢比べにも似たこの嫌な間に終止符を打ったのは俺で。


余計なことだけは言うな、と自分自身に呼びかけてみたけどその甲斐なく。


「別にその役は勧めてないじゃん」


なんて、適当な嘘でもついときゃいいのに本心ど真ん中のことを口走ってしまった。


「……それってどういう意味?」


勘のいいかずのことだ。


余計なことを言ったらまた追及されると分かっていたのに。


俺のがかずを見下ろしているのに急に立場が逆転したようで汗が吹き出てくる。


「ねぇ?まぁー…」

「っ、」


舌ったらずな呼び方。


久しく聞けていない懐かしい音に、泳ぎ始めていた目がハッとかずに集中してしまって。


「……まさき」


それに気づいたのか素っ気なくいつもので呼び捨てられる。


……チッ。


「…別に、そんなおかしな役やらせたくねぇなって思っただけっ!」


なんだか急に訳の分からない感情が襲いかかってきて心が靄つき始めたから。


かずの手を払って部屋を後にした。


説得はできなかったけど…ちゃんと声は掛けたし。


いいよね…?



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