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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

◆c


それからかずとは今までにも増してぎくしゃくした日々が続き。


結局例の役を受けたかどうかなんて勿論俺の耳に入ることはなく。


それにあの日から胸の中に広がった靄がなかなか晴れてくれなくて。


それもこれも久々に聞けると思ったかずの"まーくん"のせい。


俺にとって"まーくん"と呼ばれるのはかずしかいないから。


それが俺にとってどこか特別感っていうかさ。


俺はかずの兄貴なんだって実感できる要素でもあったのは確かで。


けれどやっぱり今日も、同じリビングに居るというのに一言も口を聞いてくれない。


はぁと重い溜息をひとつ吐きソファに背を預けた時、背後のキッチンから母ちゃんの声が届いた。


「雅紀、来週の土曜日お母さんたち出掛けるから」

「…え?なに、夜?」

「そう。ほら、結婚記念日だし。お父さんと食事してきてもいい?」


洗い物をしながらチラリこちらに目線を送る母ちゃんは、どこか照れたように微笑んでて。


「そっかぁ…うん、もちろん。ゆっくりしてきなよ」


そう返せばふふっと嬉しそうに笑ったから、俺もつられてふふっと笑うと『あ、そうだ』と母ちゃんが続ける。


「その日花火大会じゃない。あんたたち二人で行ってきたら?そこでご飯も済ませちゃいなさいよ」


ニコニコしながらそう提案され、そういえば来週は地元の花火大会だったことを思い出した。


小さい頃は家族みんなでよく行ったなぁ。


かずがはぐれないように手を繋いでやるのが俺の役目で。


人ごみの中、小さなかずを守りながら出店に並んでさ。


りんご飴食べたいってねだって買って貰うのに、かずは一人で全部食べきれないから。


結局半分以上も残ったりんご飴は俺が食べるハメになってたっけ。


「かずも久々でしょ?花火、」

「俺友達と行くから」


投げかけた母ちゃんの言葉は、かずの発せられたその一言でスパッと遮られて。


「…部活のみんなと行くって約束したし」

「あら…そうなの。ならいいけど」


母ちゃんに向かってぽつり呟いた後、移された視線が俺と重なり目が合った。


けれどすぐにふいっと逸らされ、おまけに口も尖らせやがって。


いちいち反発するようなかずのその態度に、一瞬でも昔を懐かしんだ自分が悔しくなる。


なんだよ…
そんなに俺と行きたくねぇのかよっ!

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