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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

☆m


「ねぇ翔ちゃん、来週の花火大会あんじゃん。予定あんの?」


翔ちゃんはコーヒー牛乳を口に咥えたまま器用にスマホを弄っていて。


俺にとっては困った時の翔ちゃんなの。


だって彼女いるなんて聞いてないし。


それこそかずみたいに部活のやつらとって話になってなきゃ大丈夫なはず。


つーか、かずのやつ…


花火大会にまで部活の連中で行くなんて、すっかり演劇部に打ち解けてんのか。


…なんだろ、この感じ。


俺、まじでブラコンなのかな。


「へ?なに、まさか雅紀一人ぼっち?愛しの弟クンはどうしたんだよ」

「っ、別に愛しのじゃねぇわ!」


いや、やっぱブラコンなんかじゃない。


だってほら、ブラコンってマザコンの弟バージョンだろ?


ママーっていつでも母ちゃんに泣きついてるあのキャラの兄弟版…


なんかじゃないよ、どう考えたって。


どっちかって言うと昔のかずのがよっぽどブラコンだっつーの。


そんな心の声が顔に出ていたのか、知らぬ間にスマホから顔を上げていた翔ちゃんが面白そうにこっちを見ていて。


「ははっ、なにキレてんだよ。また振られたの?」

「別に振られてないって!」


これまた随分ニヤニヤとイヤミな顔してる。


「その日母ちゃんたちもいなくてさ、かずは演劇部のやつらと約束あるって言うから…」

「なんだ、完全に振られてんじゃん」


ストローを噛んでイタズラに笑う翔ちゃんが憎たらしくて、何とか言い負かしてやりたいんだけど。


今のところ一人ぼっちなのは事実だし。


振られた…って言い方は納得できないんだけど、そもそも告ってねぇし。


つーか、告るってのは変か。


まぁいいや。


とにかく予定を持て余してることに変わりはないからぐうの音も出ない。


できたら助けてほしいとも思ってるくらいだもん。


「しょうがねぇなー。俺も約束あんだけどさ…」

「え、ウソ?彼女?」

「いや、彼女じゃねぇよ。後輩」

「…女の子?」

「男だよ」


しょうがねぇから聞いてやるよ、って再びスマホを弄りだした翔ちゃんが妙にご機嫌で怖い。


でも花火の日にお一人様なんてゴメンだから、何が何でも翔ちゃんに縋り付いてやる。

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