秘密の楽園 / Produced by ぴの
第2章 秘密の楽園 1
◆c
夢を見ていた。
俺も弟もまだ小学生で、よく二人で近所の公園に行っては飽きもせず野球に明け暮れてた頃のこと。
人懐っこい笑顔が特徴の一つ下の弟は、いつも俺にひっついて回っては同級生達にも可愛がられてたっけ。
”まーくん、まーくん”ってまとわりついてくるそんな弟が、俺も可愛くて仕方なくて。
ほんとに可愛くて可愛くて…
「…まさき、朝。起きろよ」
ゆすゆすと揺さぶられてぼんやり目を開ければ、そこには可愛い弟の姿。
…のはずが、今となってはこの有様。
「いつまで寝てんだよ。遅れんぞ」
眉間に皺を寄せて口を小さく尖らせたまま、冷ややかな眼差しで見下ろされる。
「ん〜…いま何時…」
「八時ジャスト」
「えぇっ!?ちょ、なんで早く起こさねぇんだよっ!」
「は?起こしたわ」
ガバッと飛び起きて文句を投げつけても、返ってくるのはそっけないいつもの返事。
「急げよ。俺もう行くから」
「いやっ、ちょっ、かずっ!」
ぷいっと背を向けた後ろ姿を追いかけるように、制服とカバンを引っ掴んで慌てて部屋を飛び出した。
一つ下の弟・和也は、今年俺と同じ高校に入学した。
俺は部活動推薦枠で入学したけど、かずは必死に勉強を頑張って入ったから。
そんなにこの高校に入りたかったのか、って前に聞いたら”なんとなく”ってそっけない返事が返ってきたんだけど。
もしかして俺と同じ高校に通いたかったのかななんて、兄ちゃんとしてはすげー嬉しかったのに。
最近のかずの俺に対する態度からは、そんなこと微塵も感じられなくて。
一緒に駆け込んだ満員電車の中。
いつもの定位置から至近距離でかずの横顔を覗き見る。
俺と違って母ちゃん譲りの色白の肌。
瞬きをする度に静かに落ちる睫毛と、薄い唇。
その顔は昔っから何も変わってないのに。
その口から”まーくん”と発せられることは、もうなくなってしまったんだ。
夢を見ていた。
俺も弟もまだ小学生で、よく二人で近所の公園に行っては飽きもせず野球に明け暮れてた頃のこと。
人懐っこい笑顔が特徴の一つ下の弟は、いつも俺にひっついて回っては同級生達にも可愛がられてたっけ。
”まーくん、まーくん”ってまとわりついてくるそんな弟が、俺も可愛くて仕方なくて。
ほんとに可愛くて可愛くて…
「…まさき、朝。起きろよ」
ゆすゆすと揺さぶられてぼんやり目を開ければ、そこには可愛い弟の姿。
…のはずが、今となってはこの有様。
「いつまで寝てんだよ。遅れんぞ」
眉間に皺を寄せて口を小さく尖らせたまま、冷ややかな眼差しで見下ろされる。
「ん〜…いま何時…」
「八時ジャスト」
「えぇっ!?ちょ、なんで早く起こさねぇんだよっ!」
「は?起こしたわ」
ガバッと飛び起きて文句を投げつけても、返ってくるのはそっけないいつもの返事。
「急げよ。俺もう行くから」
「いやっ、ちょっ、かずっ!」
ぷいっと背を向けた後ろ姿を追いかけるように、制服とカバンを引っ掴んで慌てて部屋を飛び出した。
一つ下の弟・和也は、今年俺と同じ高校に入学した。
俺は部活動推薦枠で入学したけど、かずは必死に勉強を頑張って入ったから。
そんなにこの高校に入りたかったのか、って前に聞いたら”なんとなく”ってそっけない返事が返ってきたんだけど。
もしかして俺と同じ高校に通いたかったのかななんて、兄ちゃんとしてはすげー嬉しかったのに。
最近のかずの俺に対する態度からは、そんなこと微塵も感じられなくて。
一緒に駆け込んだ満員電車の中。
いつもの定位置から至近距離でかずの横顔を覗き見る。
俺と違って母ちゃん譲りの色白の肌。
瞬きをする度に静かに落ちる睫毛と、薄い唇。
その顔は昔っから何も変わってないのに。
その口から”まーくん”と発せられることは、もうなくなってしまったんだ。