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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

☆m


窓の外をじっと眺めて合わない視線。


まるで話し掛けられるのを拒むように十センチもない二人の間に見えない壁がある気がする。


本当は話したいことだって山程あるはずで。


わざわざ話題なんか考えなくても話が尽きない、母ちゃんに「しゃべってばかりいないで早く寝なさい!」なんて毎晩怒られていた近所でも仲が良いと評判の兄弟だったはずなのに。


どうしてこんな風になっちゃったのかな。


何かキッカケがあったっけ…?


そう考えてみても浮かぶものなんて何にもない。


俺はダメな兄ちゃんだ…


かずをいつだって守ってやりたいって思ってるのに。


いや、守ってやるって決めているのに。


考え事でもするようにぼんやりと外を見つめたまま微塵も動かないかずの心情が何にも読めない。


「はぁ……」


溜息とともに一瞬気が緩んだ時、カーブへと差し掛かった電車がガタリと揺れた。


「っ、うわっ…!」


すでにぎゅうぎゅうの車内が重力に沿って一斉に傾き、背中にあり得ない重さがのしかかる。


おいっ、かずが潰れちゃうだろっ…


咄嗟に窓ガラスについた腕。


みるみる近付く外の景色。


昨年だったらとっととぺしゃんって潰れてるとこだけど今は違う。


俺の前にはかずがいるんだ。


僅かな隙間から顰めた眉が覗き、その表情が苦しそうに歪んでいる。


「かずっ、大丈夫…?」

「…ん」


短い返答だけで相変わらず目線なんて合わない。


でも俺と同じ高校を選んだのには何かしらの理由が絶対あるはずだから。


だって元々乗り物が苦手なかずがこうして満員電車に堪えて通うと決めたんだもん。


それに…


相変わらず華奢な身体。


細い細いと言われる俺よりも遥かに細くて遥かに小っちゃい。


もしかしたらここから先、成長するのかもしれないけど…


そんなの想像つかない。


かずはいつだって小っちゃくて可愛い俺の弟。


だからずっと、俺が守ってやるんだ。

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