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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第5章 秘密の楽園 4

◆c


続く沈黙。


きつく目を瞑ってはいるけど、飛び出してしまうんじゃないかというほど心臓はどっくんどっくん鳴っていて。


逃げ場も無いまま、ただひたすらこの現実から逃れるように寝たフリを決め込む。


…そう、俺は寝てるんだ。


寝てんだよかず。


だからもうこれ以上名前呼ばないで…!


「…まーくんあのね、」


そんな心の叫びも虚しく、静かなそのトーンが沈黙を破った。


ぎゅっと密着するかずの体。


すうっと息を吸い込んだのか、小さく上下した胸が背中に纏わりつく。


「俺…ずっと変なの。変なんだ…おかしいの」


途切れ途切れに発するかずの口調は、もうすっかり昔の幼いかずそのもので。


その甘さすら感じるトーンに益々どっくんどっくんと高鳴る心臓。


かずの言わんとしていることは大体察しがつく。


ベッドに飛び込んできたり、抱きついてきたり、まーくんって呼んだり。


そんな全ての奇行は自分でも『おかしい』って自覚済みなんだよ。


その『おかしい』が意味することはもう…


やっぱり一つしかないよね…?


だとしたら俺…


俺はっ…


「…俺ね、まーくんのこと、」

「っ、タンマ!」


か細い囁き声を制するようにガバッと勢い良く起き上がった。


かずの言葉も腕も何もかも振り払ったはいいものの、暴れ回る心臓と同じように荒く上下する肩。


ちょっと待てよ…


その先は…


するとふいに空気が動いた気配がして。


そっと腕に触れた感触がして、思わずピクッと肩を揺らす。


「…まーくん」


体を起こしたらしいかずがいつの間にか距離を詰めてきていて。


振り向けば、目の前に迫ったかずの顔。


暗闇の中でも分かるほど、その瞳はうるうると水分をたっぷり含んでいる。


その瞳がゆらゆら揺れてどことなく泣きそうな表情で。


しかも呼吸まで浅くなって明らかに興奮しているのが分かる。


そんなかずの眼差しに体中の血がざわめくような感覚になった。


まずい…


これはまずいっ…


今まで警報ランプは回りっぱなしだったけど、とうとう逃げられず時すでに遅し。


「まーくんっ…」


きゅっと腕を掴まれたと思ったら、体にぶつかってきたような衝撃と。


同時に柔らかいかずの唇が俺のそれに押し当てられた。



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