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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第5章 秘密の楽園 4

☆m


っ…!


寝てると思っていたかずが起きてたってことになのか、『まーくん』って呼び名になのか。


…多分両方なんだけど。


抱きつかれてるってのも含めたかずの奇行に心臓が止まりかけた。


無意味に息まで止めちゃったせいで苦しくて仕方ない。


きょろきょろと瞳を動かしてみても、背中側にいるかずの様子なんてひとつも分からないのに。


かずに触れている部分が使い物にならないくらいに熱をもっている気がする。


「…まーくん?起きてる…?」


その時、かずの囁き声が改めて聞こえて。


呼吸も限界だったからそっと息を吐き出した。


ようやく呼吸だけはできるようになって、沸騰していた頭の中に新鮮な酸素が取り込まれていく。


そうなってくると、この現状が襲いかかってくるわけで。


こんな行動をしておいて俺に声をかけてくるなんて…


かずは一体何をしようとしてるんだ…?


一緒に寝ようってベッドに忍び込んでさ、こんな風にくっついてきて。


それを『寝惚けていただけ』って理由にしないなんて。


じゃあ、その手の意味は?


俺の首にかかる吐息は?


遠慮がちに触れた脚って何か理由があるの…?


すぐ目の前にある真っ白な壁。


かずの意味深な行動に追い詰められている俺の心と一緒で、どこにも逃げ場がないみたい。


このままじゃ、いけない気がする…


これ以上かずに攻め込まれたらとんでもない事態になってしまいそう…


カンカンと突然頭の中で響いた警報は全然遠くからじゃなくて。


間近も間近、視界が真っ赤に染まるくらいに目前。


どうしようっ…


焦り戸惑っている間にも、何度もかずが俺に声をかけていて。


俺にかずを止められるか…?


いや、かずは普段は大人しいけど昔から譲れないと思ったら絶対に譲ってくれないタイプだ。


その時には散々引っ付いてきた俺だって平気で突っぱねる。


それほどまでにかずが好きなのはハンバーグとメロンパンと…


”いやだ、まーくんと一緒じゃなきゃ絶対イヤ!”


その時ふと蘇った幼いかずの癇癪に、余計にドキドキドキドキしてきちゃって。


「まーくん、寝てるんだよね…?」


Tシャツを掴んだ手が少しだけきつくなったのを感じて、慌てて寝たフリをすることに決めた。

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