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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第6章 秘密の楽園 5

◆c


抑えられない感情をぶつけてくるようなぎこちないキス。


でも触れている唇はびっくりするほど柔らかくて。


そのアンバランスさも今起こっている事態も何もかもが、俺のキャパをとっくに超えている。


『無我夢中』って言葉がまんま当てはまるような目前のかず。


そんなかずを突き飛ばすことなんて出来るわけもなく。


でもだからってぎゅっと抱き締める訳にもいかず。


宙を彷徨う俺の両腕は完全に行き場を無くしちゃって。


「んっ…まー、くんっ…すきぃ…」


いつの間にかしっかり馬乗り状態で両頬をがっちりホールドされてしまってて。


かずの吐息と絶えず溢れる"まーくん好き"が俺の頭と体をみるみる支配していく。


かずの口からハッキリ届いた"好き"というフレーズ。


そしてこの状況からして、やっぱりそれは紛れもなく…


これはやばい…


やばいやばいやばいやばいやばーいっ…!!


「っ、かずっ!」


彷徨わせていた両手でぐいっとかずの頭を引き剥がせば、ハァハァと荒げた吐息と真っ赤に染まった顔で見下ろされて。


っ…!


その唇の端からツーッと顎を伝う唾液に思わず息を飲んでしまう。


いや…かずは弟なんだって。


つーかその前に俺たちは男同士だし。


こんな…こんなこと…


頭ではそう思おうとしても、この置かれた状況と目の前のかずの姿に。


心がグラグラ揺らいで仕方がない。


だって、だってほんとに…


一ミリだって嫌じゃない。


むしろかずの唇の感触が気持ち良すぎて体がズクズク反応してしまってる。


昔から俺の傍をくっついて離れなかったかず。


可愛くて可愛くてどうしようもないくらいだったんだ。


そのかずに…


"まーくん…ずっと好きだった…"


切羽詰まった表情のかずが絞り出したあのセリフ。


俺にとってのかずは、かけがえのない大事な弟。


そのかずが精一杯曝け出した俺への気持ちに…


兄貴として、男として…


いや…
俺自身としてちゃんと応えられないでどうすんだ。


頭に添えていた手を滑らせてかずの火照った頰を包み込む。


段々と落ち着きを取り戻した瞳は不安げにゆらゆらと揺れていて。

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