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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第6章 秘密の楽園 5

☆m


「…なんで止めるの?」


その瞳は儚げに見えて妙な威圧感があり俺を捉えて離さない。


普段男にしては高めのかずの声。


それが聞いたこともないほどに低いトーンを出すからざわざわと胸がざわめく。


ちゃんと、応えなきゃ…


兄として。


男として。


「かず…」

「彼女ともしてるくせに」

「っ、」


だけど、もはや据わっていると言ってもいいくらいかずの瞳は俺を…


いや、俺を通り越してまるで『俺じゃない俺』見つめているよう。


濡れた唇をぐっと噛み締めて苦しげに表情を歪めている。


「おいっ…かず、違うって」


さっきから繰り出される『彼女』というワード。


それはかずが誤解していると明らかで。


何度も否定を試みているのに全くかずには伝わらない。


俺の声なんて届いていないんじゃないかって思うほど、かずの周りに見えない膜がかかっているみたい。


まるで自分の殻の中でもがいているようでこっちまで苦しくなる。


「かず、俺彼女なんていないって」


とにかく冷静になって話を聞いて欲しくて、"ね?"って問い掛けてみてもかずの反応は窺えなくて。


掴まれたままの腕にジリジリと力が込められていくのを感じ、ただ事じゃない気配が漂う。


待って。


え、待って待って。


俺、どうなっちゃうの?


どう見たってかずの様子はおかしいし、下手したらヤラれちゃいそうなんだけど…


「…か、かず?」


身の危険すら感じるほどの気迫に、さっきまでとは違った意味で追い込まれていた時。


ついにかずが薄い唇を開いた。


「…もっとエロイこともしてるんだ」

「へっ?」

「こことか」

「っ、ちょっと…!」


そうしてかずの手が触れた先がまさかの俺のソレで。


慌ててかずの手を振り払った。


「何すんだよっ!」


ノーガードだったそこに柔い感触。


敏感なところだからそれだけでもじわじわと熱が宿るというのに。


「俺にも触らせて」

「はぁっ?」

「彼女にやってもらってんだろ?」

「ちょい、待てって…」


俺の急所を捉えようと何度も何度も伸びてくるかずの手を必死の思いで避けまくった。

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