秘密の楽園 / Produced by ぴの
第7章 秘密の楽園 6 by mimi
カーテンから漏れる朝日。
白んだものでなくすっかり鮮やかな光になっていて。
寝過ごした!と飛び起きたそのすぐそばにあるぬくもりがたちまち焦りを消し去っていく。
穏やかな寝息を立てているかずは幼い頃とあまり変わらない寝顔で。
しばらく見る機会のなかったそれに愛おしさがまた込み上げてくる。
考えるまでもなく伸びた手がそっとかずの頬に触れて。
その滑らかで柔らかな感触に自然と『好き』って言葉が溢れそうになる。
…んだけど。
「……」
ピクピクと揺れる睫毛。
一定だった寝息もすっかり乱れている。
「かず、もしかして起きてる…?」
掠れる声で恐る恐る訊ねてみたら次第に肩が揺れだした。
間違いない、これは絶対起きてる。
「…ふふっ、んふふ…」
「ちょっと、かず!いつから起きてたの?」
「んふふふ……いーじゃん、いつだって」
瞼の次は可愛らしい手に隠されていた瞳が右目だけゆっくりと現れて。
ウィンクみたいなイタズラな笑い方に朝っぱらから鷲掴みにされちゃう。
一日の始まりって最近はかずの不機嫌な顔だったけど、こんな愛らしい表情を朝から見れるなんて最高じゃない?
それに"ヨダレ垂らしてたよ、まーくん"って。
やっぱりかずに『まーくん』って呼ばれるのが好き。
どうしようもない内容だって『まーくん』って付いてたら何だって許せちゃう。
何だよ、俺ってばかずのこと大好きじゃん。
気付けて良かった。
全部、かずのおかげだもんね。
「かずぅー」
思わずぎゅっと抱き締めたら痛いだの暑いだの、さらには汗くさいだの酷すぎる文句しか言ってこないけど。
「もう、まーくんってば!」
やっぱり許せちゃう。
「くふふ」
「気持ちワルっ!」
もう起きるからね、って腕を擦り抜けたかずはベッドを降りるとそのまま部屋から出て行こうとする。
「っ、ちょっと待って!俺も行く!」
慌てて追いかけたら前から"うわっ!"って声。
それとともに聞こえてきたのは。
「なに?あんたたち今起きてきたの?」
「か、母ちゃん…!と、泊まってくるんじゃ?」
「泊まって来たわよ。混む前に帰ってきたの。お父さんは予定もあったし」
廊下で母ちゃんに鉢合わせちゃってマジで心臓が飛び出るかと思った。