秘密の楽園 / Produced by ぴの
第7章 秘密の楽園 6 by mimi
「珍しいわね、一緒に起きてくるなんて」
「っ、ゲームしてたら寝ちゃってたの!」
かずの咄嗟のフォローで事なきを得たけど内心バクバクしっぱなし。
冷や汗が滲んだのが分かったしかずの目だって泳いでいる。
そんな俺らの事なんて知らずに母ちゃんは"ご飯はこれから?何かあったかしら?"と何事もなく階段を降りていった。
その後ろ姿を見送り、合図なく二人で部屋へ逆戻り。
バタンと後手に扉を閉めてから大きく息を吐き出した。
…あぶねぇ!
ちらりとかずを見たらかずも胸を押さえて大きく肩を上下させていて、目が合うと苦笑い。
「気をつけなきゃね」
そう言ってはにかんだ笑顔があまりに可愛いから、たった数秒前の焦りも忘れて引き寄せようとしたけれど。
ピコンとどこからともなく聞こえた通知音で我に返った。
…なんだこれ?
送り主は昨夜散々迷惑をかけた翔ちゃん。
『心配したんだぞ』っていうのは分かるけどその後…
「サンキューって何のこと?」
ご機嫌なスタンプまで付いてるけど意味が分からない。
そんな俺の声が聞こえたのか、躊躇うことなく画面を覗き込んだかずが"あ、上手くいったんだ"って呟いて。
それでようやくピンと来た。
「え、あっ…そういうこと?」
そういや昨日かずが松本くんに相談してたって言っていた。
互いに片想い…ってつまりはそういうことだよね?
あれっ?ってことはさ…
「俺、もしかしてすごくお邪魔だったんじゃ…?」
かずのことで頭いっぱいで気が回らなかったが、俺ってば二人の時間に入り込むようなことをして。
二人とも何も言ってはいなかったけど…
「まぁ、邪魔だよね」
俺ならブン殴ってる、ってかずの遠慮ない言い方にサーッと血の気が引いた。
「俺っ…最低だ!」
慌てて電話を掛けようとしたけれど"だからそれが邪魔なんだって"ってかずに言われちゃって。
どうしようもなくなってとりあえずスマホを放り投げた。
そんな俺をかずは鼻で笑ったけどさ。
「かずのせいでもあるんだからね」
「はぁ?なんで俺のせいになるの?」
「かずが演劇部でお祭りに行くなんて言わなかったら俺は翔ちゃんに声かけてないもん」
"だから元はと言えばかずのせい"って言ったらかずは唇を尖らせた。