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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第8章 秘密の楽園 6 by cima




「おい雅紀!何やってんだよ早くしろよ!」

「雅紀さん急いでっ!」


少し前から振り返りつつそう投げ掛けられ、仕方なく先を急ぐ二人に駆け寄った。


かずからこのチケットを手渡されたのはほんの二日前。


そう、何を隠そうかずと両想いだという事が分かった翌朝のこと。


実は内心すごく気になってはいたんだ。


かずが結局あの役をやることになったのかどうかってことが。


そしたらかずの方から急に"今度演劇部の定期発表会やるからまーくんも観に来て"なんて言われて。


手渡されたチケットを何とも言えない顔で見つめていたのを目敏く見つけたかずに。


"…ねぇまーくんやきもち?"


って下からニヤケた顔で覗き込まれたからうるさい口をぴったり塞いでやった。


ざわざわとした会場の中、翔ちゃんたちに連れられて進んだのは前から三列目のド真ん中の座席。


「えっ、こんな近くで観んの?」

「いいじゃんせっかくなんだしさぁ。な?潤」

「うん。その方が和も喜ぶと思いますよ」


言いながら翔ちゃんの腕をそっと掴む松本くんは完全にデート気分って感じで。


かずから二人のことを聞いてはいたけど、今のこの複雑な心境では素直に祝福できないっていうか。


…なんか俺だけ蚊帳の外。
しかもかずの役もどうせあれなんだろ…


ブーっと開演のブザー音がして暗転する会場内。


ヒソヒソと楽しそうに会話をする隣を見遣って渋々舞台に視線を送った。



***



結論を言うと…


かずのお芝居はめちゃくちゃ良かった。


大野さん演じる兄に恋をする弟のかず。
謂わば『禁断の恋』ってストーリーだったんだけど。


何て言うか…かずのお芝居に完全に惹き込まれちゃって。


最終的にはかずの恋は叶わないままエンディングを迎えるわけだけど、その大野さんに向けられる眼差しとかセリフとか全てが妙に生々しく感じて。


もしかしてかずは今までこんな風に俺のことを想い続けていたのかなって思ったら、最後は感極まっちゃって号泣してた。


ついでに大野さんのお芝居もめちゃめちゃ上手くて、結果的に俺なんかが嫉妬する隙なんか一ミリもなかったってワケで…

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