秘密の楽園 / Produced by ぴの
第8章 秘密の楽園 6 by cima
演劇ホールのロビーで翔ちゃんたちと待っていると、奥の廊下からぞろぞろと演劇部の面々が姿を現した。
大野さんの隣を歩いてくるかずが俺に気付き、パッと表情を変えたのが分かって。
「まーくん!」
嬉しそうに駆け寄ってくるかずに胸がきゅんと高鳴る。
そんな俺の横で翔ちゃんがニヤニヤして囃し立てるから咳払いをして顔を引き締めた。
「ねぇどうだった?俺のお芝居」
「うん、めちゃ良かったよ。なんか感動しちゃった俺」
「え?まーくん泣いたの?」
「ふは、そうそうコイツ横で号泣しちゃってさぁ」
「ちょ、翔ちゃん!」
横槍を入れてきた翔ちゃんに焦りつつかずを見れば楽しそうに笑っていて。
こんな恥ずかしい姿を曝け出しても、なんだかんだでかずが笑ってくれればそれでいっかって。
今までは兄貴としてかずにどう振る舞うかってことばかり考えていたけど。
もう今は…
そんなことよりかずをどれだけ笑顔にできるかってことの方が大事な気がしてんだ。
…恋人として、大切な存在のかずを。
「よぉ兄貴、観に来てくれたんだな」
ぽんと肩に乗った重みに振り返ると、ついさっきまでかずの兄を熱演していた大野さんが居て。
さっきの舞台上での様子とは正反対のふにゃふにゃの笑顔で声を掛けられ、思わず背筋が伸びる。
「あの…お芝居凄く良かったです!なんか俺誤解してました、大野さんのこと…」
「ん?なにが?」
「いやこっちの話なんですけど…いやあの、かずにいい役をもらえてありがとうございました。ほんとお疲れさまでした!」
ぺこりとお辞儀をしたらふふっと漏れた笑み。
「いやいや…だってかずを口説いてくれたのは兄貴だろ。おかげで俺もいい思いできたし」
「…え?」
「ふふ、いんや。また頼むな、かず。じゃお疲れ」
ヒラッと手を振った大野さんを見送ってかずを見れば、同じように視線を送っていた瞳がこちらを向いて。
ジッと見上げてくる不安そうな瞳に、大丈夫だよって意味を込めて頭をぽんぽんと撫でてやった。
…前言撤回。
やっぱり大野さんは要注意人物決定だな、うん。