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僕ら× 2nd.

第10章 …---… --Shu,Ar

~吉坂侑生side~

偽メーデーからの夜午前。
柊は様子観察の入院となり、俺は付き添う。

本来なら、今すぐにでも駆け回りたいが、未だ機上の彼女。
なりふり構わない親父らがいる以上、ここで俺がヘタに動くわけにはいかない。

「もう喋んな。俺も、お前が治るまではおとなしくしてるよ。まずは寝ろよ」

1人用の病室、廊下側の足元を照らす明かりの元。
カーテンの向こうから何かと口を挟んでくる柊に、ノートPCのトラックパッドをなぞる俺は何度この台詞を投げただろう。

そりゃ俺だって、お前がいてくれれば、どんなに心強いか。
こんなことになるとわかっていれば、もっと早くから、あの家を抜け出していたのに…。

いや、今はそんなこと言ってられねぇ。

ひとりでできるだろうか…。
だけど、誰も巻きこめねぇ。

うまくいくだろうか…。
失敗すると思っていては、成功の道は途絶える。

熟考なんてする時間はない。
目標を定め、できるだけの想像力をはたらかせて、指示を打ち込む。

うちに、雑な音がしてカーテンが払われ、点滴棒を担いだギガントピテクスが顔を出した。
どんな病人だよ…。

「休んでろっつうの」

「お前が何かしでかす気なのはわかってる。俺を安静にさせたいのなら、まずは話せ。
お前だけで立てる計画に穴がないわけねぇ。添削して、そしたら寝てやる。点滴、引きちぎんぞ?コラ」

えっらそうにコノヤロ。

「鎮静剤、頼んでやろうか?」

「んなもん、俺に効くか」

「効かねぇのか?」

耐性のある身体に改良されてんのか?

「本気にすんなよ。さあ、吐け」

いや、マジで効かねぇ気がする。

「花野ちゃんの安全に関わるんだ。俺は見てのとーり動けねぇから口しか挟めねぇ。早くしろ。傷開くじゃねぇか!」

「…わかったよ。その代わり、寝てろ」

そんな脅しがあるかよ?ったく。

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