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地下アイドルの休日

第2章 夏休み申請

後は渋滞がないのを祈るだけである。

思えば数年前の東北行きの珍道中も渋滞から始まったことが思い出される。

かくしてゆっくりできると思っていた明日も夜明前から出発というハードスケジュールに一変した。よりにもよって東北に遠征する前日に・・。

あやのんもちはるんもどんよりと落ち込んだ。

そんな落胆や疲労は微塵も感じさせずにその日のビアガーデンも2ステージ見事に盛り上げた。こういうところは流石プロのアイドルである。

そして翌朝。
夜明前に事務所に集合して車は出発した。
いつもは集合時間ギリギリだったり少し遅れてバタバタとやってくるちはるんだが、こういうヤバい時にはちゃんと余裕を持った時間にやってくるのはエラい。

まずは朝食にピーターパンでパンを買った。ピーターパンとは某県内に何店舗かあるパン屋さんで、味の評判はかなりよく、フルーティの二人も大好きである。

この前のライブで、ピーターパンのパンが美味しくて大好きだという話をしたら、オレも~っと同感してくれるファンたちがいたのは嬉しかった。

そんな大好きなピーターパンのパンを超不機嫌そうに食べてちはるんが言った。

「明日から東北遠征なのに何でこんな目に・・もう限界、疲れたよ。ワンマンライブ前から全く休んでないよ、休みたい~っ」

「ち、ちょっと、ちはるん・・」

あやのんだって休みたい気持ちは同じだ。よく言ったと思いながらも一応はたしなめる。

「分かった、お疲れさんね。東北の翌週はG市のイベントだけが確定していたけど今日になったことだし、東北の翌週は一週間オフにしましょう」

女社長が上機嫌で一週間ものオフを言い出したのであやのんもちはるんもきょとんとして見つめ合った。

実は女社長もこのところのハードスケジュールには疲れていて、幸いにも東北の翌週はG市のイベントが突然今日になったため確定している仕事もないから一週間ぐらい休みにしたかったのだ。

しかし、社長が疲れたとか休みたいというのはお抱えのアイドルフルーティのふたりに示しがつかないし、どうしようかと思っていたのだが、頃合いよくちはるんが疲れた、休みたいとぼやき始めてくれた。

これで自分のせいでなく、フルーティのふたりも疲れているという大義名分を以て休みにできるというものだ。

ずっと行きたかった日本酒めぐりツアーに行こうと女社長は胸を弾ませていた。

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