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地下アイドルの休日

第2章 夏休み申請

ちはるんは集合時間ギリギリに慌ただしく事務所に駆け込んできた。大体いつもギリギリセーフかちょっと遅刻してくるのがちはるんのパターンである。

こんなところにも二人の性格の違いがよく出ている。

ドタバタと慌ただしく駆け込んできたちはるんを愉快そうに見ていると女社長のケイタイが鳴った。ちなみに女社長の着信音は演歌である。

「ち、ちょっと、ふざけんじゃないわよ」

ちはるんのドタバタを見て愉快そうに笑っていた女社長の表情が一変、鬼の形相となって声を荒げた。

ちはるんとあやのんは何事が起きたのかと目をパチパチさせて顔を見合せた。何かよくないことが起きたのは間違いなかった。

電話はイベント会社の社長からで、明日某県の最も東部で行われるお祭りのステージに出てくれというものだった。

このお祭りは東北のイベントの翌週の同じ曜日ということで仕事を請けており、昨日電話で日程の再確認をしたばかりだった。

早い話がイベント会社の社長が日程を二週間勘違いしていたのだ。

「昨日確認したばかりじゃないの、今日の明日でそんな・・ムチャ振りもいいところよ」

この某県の最も東部の街、仮にG市としよう、は市長もフルーティを気に入っていて、街をあげてフルーティを応援している。だから祭り等の街をあげてのイベントにはフルーティの出演は絶対という雰囲気である。

それを日程を勘違いしていたためフルーティが出れませんで済むはずもない。

女社長は耳が悪いので通話音量は最大にしてある。携帯からは上ずって震えているイベント会社社長の声が漏れてくる。

涙を流して土下座をしている様子が目に見えてくるようだ。

G市は市長を先頭に街中がフルーティを応援していて今回もフルーティを楽しみにしている。そんな依頼を無下にするワケにもいかない。

このイベント会社の社長だってたまにこういう大ボケをかますのには困ったもんだけどG市のイベントとか大きな仕事を持ち込んでくれる恩もあるので、強く出なければいけない時には強く出るが、全く無下にするワケにもいかない。

10時と14時に出番が予定されていたステージを10時と12時に変更することを条件に請けることにした。

12時からにしてもらえば13時過ぎには出発できる。それなら最も東部から最も西部まで某県を横断しても夕方のステージには間に合うだろう。

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