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『untitled』

第3章 一線を、越える

「ふわぁ~」

暫く動きの無い竿先をどれくらい見つめているだろう。

「そろそろ休憩すっか?」

「うん、そうする」

釣れない時は気分を変えるのが一番。

船べりを背もたれにし、ずっと立ちっぱなしだった脚を休ませる。

近くにある鞄に手を伸ばし、船の上での俺の最強の食事の魚肉ソーセージを取り出す。

先を歯で噛みながらグリっと回し、封を開けると一口頬張る。

「うんめぇー」

やっぱり船の上はこれに限るな。

もう一本食べようと手を伸ばすと、スマホのお知らせランプが光っているのが見えた。

おっ、LINEだ。

アプリをタップすると、グループLINEにメッセが入っていて、最後は相葉ちゃんのスタンプで終わっていた。

またテンション上がってんな。

なんて思っていたけど……

このグループはニノ以外のメンバーのLINE。

なんだ、この胸騒ぎ。

理由もわからないモヤモヤした気持ちを抱えながらグループLINEを開いてメッセを確認する。

翔ちゃんから送られたURLをタップすると朝のワイドショーの様子が流れる。

木村くんとの距離の近さに、ジワジワと身体の中から湧き上がる何か。

木村くんに笑顔を向けるニノの姿に、自然とスマホを持つ手に力が入る。

そして木村くんとの明らかにプライベートで撮ったであろうツーショットの写真。

一体、ニノはどういうつもりで翔ちゃんに送ったんだ?

写真を画面上に表示すると、2本の指をニノの顔の所で広げた。

可愛い笑顔しやがって……

この写真を送った翔ちゃん。

【確認済み】とだけ送った松潤。

大量の激おこのスタンプを送った相葉ちゃん。

きっとみんな考えていることは同じ。

この笑顔は俺たちにしか見せちゃいけない。

俺たちだけのニノなんだから。

例え先輩であってもね?

それをわかってないなんて……

【お仕置きだな】

俺の送ったメッセの横にすぐに既読3が表示された。

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