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『untitled』

第3章 一線を、越える

「あっ、お目覚め?」

俺の気配に気がついた相葉さんが声をかけてくれた。

「腰痛い、もう歩けない」

「もう、ワガママだなぁー」

俺の元まで迎えに来ると、軽々と俺を抱き上げる。

いつでも俺に無条件に優しい相葉さん。

「おっ、落とすなよ!」

俺は首に手を回して顔を埋める。

「はいはい、わかりましたよ」

「はい、ノド……カラカラでしょ?」

ソファーに下ろされると、翔ちゃんが水の入ったグラスを差し出してくれた。

俺が今、一番欲しいものにいつも気がつく翔ちゃん。

「誰のせいでこうなったと思ってるの?」

「じゃあ聞くけど……誰のせいでそんなに声が出なくなったの?」

ジトっと睨みつけた翔ちゃんは、ニヤリと俺に笑い返してくる。

「俺のせいだよ……な?」

エプロンをつけた潤くんが俺にウインクする。

「違うわ!ってか、ご飯!」

「もうすぐ出来るから待ってて」

キッチンへと戻っていく背中を見つめる。

いつも俺のためにご飯を用意している潤くん。

「ホント、よく寝るなぁ」

翔ちゃんの目線の先にはラグの敷かれた俺の足元で熟睡中の大野さん。

「何で俺より寝てるんですか」

爪先で腰辺りをツンツンとつついてやる。

「ぅーん、ニノ……起きたの?」

「とっくにですけど」

ふにゃっと笑って嫌味をものともしない大野さん。

プルルッ…プルルッ…

「誰か、スマホ鳴ってない?」

相葉さんが周りをキョロキョロ見渡す。

「俺じゃないよー」

「俺も鳴ってないし」

「俺も違う」

消去法で鳴っているのは俺スマホ。

「眠気覚ましにスマホ取ってきて。たぶん寝室にあるから」

「えー、嫌だよ」

「ほら、さっさと取りに行く」

俺は足をブラブラさせて寝ている大野さんを蹴る。

「痛いっ、痛いよ……もう、仕方ないなぁ」

ゆっくりと起き上がると、ポリポリと頭を掻きながら寝室へと向かう。

何だかんだで俺の言う事を聞いてくれる大野さん。

俺だけの大野さん、翔ちゃん、相葉さん、潤くん。

だから、これからもずっと俺に構ってね。

じゃないとまた仕掛けちゃうよ?

ってまだまだ作戦はあったんだけど、序盤の序盤でこんな風になるなんて……

嬉しい予想外。

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