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『untitled』

第3章 一線を、越える

なかなか寝室から戻ってこない大野さん。

「まさか、寝ちゃったとか?」

そんなわけあるか!って言いながら翔ちゃんが寝室を覗きに行こうとしたら大野さんが怖い顔して俺のスマホを手にして出てきた。

「どした…?」

「うっ!」

スマホを俺に差し出す。

「はい、ニノ!出来たよ!」

潤くんがテーブルにお皿を置いた。

白い湯気があがる。

大野さん、潤くんの顔を交互に見てお礼を言って
スマホを受け取ろうと手を伸ばした。

そうしたら、また着信が。

そこには“木村拓哉”の文字。

みんながいるこの部屋で電話になんて出れない。

寝室に戻ろうと立ち上がりかけたら、相葉さんに肩を押されまた、座らされた。

いつの間にかそばにいた翔ちゃんがスマホにタッチしてスピーカーにさせられた。

大野さんの怖い顔の理由は木村くんからの電話だったからなんだ。

そして、スピーカーにしたってことは、ここで、みんなの前で喋れって。

俺がどんな顔で木村くんと話をするのか、見たいってことなんだ。

寝室からリビングに移動して、みんなにワガママをきいてもらって。

みんなに甘やかされて。

たった、一つの着信がさっきの楽屋に戻ったような、そんな空気になってしまった。

『もしもし?ナリ?』

木村くんのあの声がする。

低くて、優しい。

「は、はい!お、お疲れさまです」

若干、裏返った声。

『寝てた?』

「いえ、起きてます!どうしたんすか?」

いつも通り、普段通りの俺を。

でも、意識すればするほど…

『…なんか…変じゃね?お前…』

「ど、どこが?」

みんなが俺の一語一句を逃さないように聞き耳を立ててるのが分かる。

『…まぁ、いいんだけど…こんどのオフさ飯行かね?』

「ご馳走さまでーす♡」

『早えぇって!ナリの好きそうなとこ予約しとくから…』

「俺の好きなそうな…って分かります?」

『分かる!分かる!』

「嬉しいなぁ~そんな風に言ってもらって!」

みんなの顔を順番に見ながら木村くんと話す。

みんなの瞳の奥に赤い嫉妬の炎が宿ってきてるのを感じた。

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