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『untitled』

第3章 一線を、越える

「お前、ホント可愛いなぁ」

撮影で一緒だった柴犬の顎の辺りを撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。

「じゃあな」

眉間辺りをクシャっと撫でると、上目遣いで俺を見つめる。

「まだして欲しいの?」

俺の言葉にクルっとなっている尻尾をブンブン振る。

甘え方といい、ご機嫌になった時のわかりやすさ。

ホント、そっくり。

「でも今日は終わり、じゃあな!」

ポンポンと頭を優しく撫で、『くぅーん』と俺を呼ぶ声を背に早足で楽屋に戻る。

ごめんな?

今はお前にそっくりなニノの事が心配なんだ。

今日は、木村くんとの食事。

帰ってきたらLINEするように伝えていたから、連絡が入っているのか気になって仕方が無かった。

スマホを確認したけど……連絡が入っていない。

遅い、遅すぎるっ!

もしかして木村くんと……

いやいや、そんな訳ない!

ブンブンと首を振って邪念を振り払うと、5人のグループLINEにメッセを入れた。

するとすぐにメッセは返ってきたけど、それは4人のグループLINEのメッセ。

【無事、奪還】

その後に送られた写真には松潤の腕枕でスヤスヤ寝ているニノの姿。

少し頬が染まっているのは松潤に抱かれたからか、お酒が残っているのか。

酔ったニノってマジ可愛いんだよな……

もし仕事が無かったら俺がニノを迎えに行ったのに!

でも松潤が奪還してなければ、さっき浮かべた最悪の状況になりかねなかった。

再び、LINEの通知がなると翔ちゃんからのメッセ。

【木村くんには電話でお礼しておいたから】

お礼って……先輩にもやっちゃったのね。

まぁ、ニノに手を出す誰よりも木村くんは手強くて危険だからね。

じゃあ、俺も何かしなくちゃね?

【明日、ニノにお説教します!】

メッセと同時に怒りのスタンプを送った。

やっぱり……お仕置きだよね?

【明日は俺】

うそぉぉぉぉぉん。

シンプルなリーダーのメッセに俺は肩を落とした。

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