Living with Simone アイツと暮らせば
第17章 部屋の鍵
シモーネから手紙が来た。
リハビリの一環?ならしい。
どんなに自分が愚かだったかとか、馬鹿げたことをしたかとかそんなことが書かれていた。
セラピーの一環として家族や近しい人と
一緒に話し合う日ってのもあるらしい。
「ねぇ…こんな手紙が来たんだけど。」
ミカはアレックスに手紙を見せた。
「接近禁止命令が出てるのアイツは知ってるんだよね?」
アレックスはシモーネの手紙に眼を通しながら言った。
「うん。知ってる筈。アレックスの所にはお願いされてないの?」
「うん。別に何も言われてないし…。
そろそろ様子を見に行こうかと思ってるんだ。
嫌だけど…。」
アレックスが笑った。
「悪いけど…私行けないわ。手紙で返事を書くつもり。」
「アイツになんか伝えたいことはある?」
「“もう疲れた。お前の面倒はみきれない。
クリーンになっても会うつもりは無い”って伝えて欲しい。」
ミカの決心は堅かった。
「判ったよ。ちゃんと伝えておく。」
裁判所の決定だから、
しっかりスケジュール管理されてるって
アレックスが教えてくれた。
それからもシモーネから時々手紙が来た。リハ期間は過ぎたけど、他のリハビリ施設でもう暫く過ごすつもりだと言う他愛の無い内容だった。
引っ越ししたし、郵便転送もどうせ1ヶ月ぐらいだから…と思って、ミカは何度目かの手紙が来た時に、もう返事は書かないとシモーネに伝えた。
それでもアイツは定期的に手紙を送りつけて来た。
「そういうのも手続きすれば辞めさせることが出来るけど?」
ダンがアドバイスをくれた。
「そこまではしなくても良いの。手紙なら見ないで捨てることも出来るし、手紙の転送サービスも終わるから。」
「まぁ…何かあったら協力するから言ってね。」
ダンは時々ミカの家にアレックスと
一緒に来てご飯を食べたりしていた。
そんな手紙がある日を境にぴたりと来なくなった。
今はそれ以上アイツと関わりたくなかった。