月の木漏れ灯図書館
第18章 蒼京月は語らない
繊細な楽器の音色のように、雨は様々な音色を紡ぐ。梅雨に入ってまだ数日。少女はいつものように大通りから少し離れた場所にある、幻想アンティーク雑貨兼喫茶店で紅茶を飲んでいた。
「どうや?」
どうと聞かれても……。
「……めちゃくちゃ苦いんですけど」
一体何入れたんですかと聞こうとするより先に青年が楽しそうに喋りだす。
「せやろ?苦味のある茶葉を片っ端から調合してみたん。あーその顔ほんと面白いわあ」
「……いえ、こっちは全然楽しくないですよ京月さん」
「ひどい顔が、いつもより余計ひどいで。夏乃香ちゃん」
わたし水里夏乃香はこの喫茶店の常連客兼人ならざるモノがみえたり、声が聞こえたりする。そしてーーここの店主蒼京月は年齢不詳、出身地不明、よくわからない怪しい存在。
毎回お茶をご馳走してくれるんだけど、おいしいお茶をただの一度も飲んだことがない。
いつも華やかな藍色の羽織を纏っている。髪には蒼い椿の簪。髪は濡れ羽色。美青年なのに、口が遥かに悪い。
どうしてこんなところに通っているかと言うと……。
「どうや?」
どうと聞かれても……。
「……めちゃくちゃ苦いんですけど」
一体何入れたんですかと聞こうとするより先に青年が楽しそうに喋りだす。
「せやろ?苦味のある茶葉を片っ端から調合してみたん。あーその顔ほんと面白いわあ」
「……いえ、こっちは全然楽しくないですよ京月さん」
「ひどい顔が、いつもより余計ひどいで。夏乃香ちゃん」
わたし水里夏乃香はこの喫茶店の常連客兼人ならざるモノがみえたり、声が聞こえたりする。そしてーーここの店主蒼京月は年齢不詳、出身地不明、よくわからない怪しい存在。
毎回お茶をご馳走してくれるんだけど、おいしいお茶をただの一度も飲んだことがない。
いつも華やかな藍色の羽織を纏っている。髪には蒼い椿の簪。髪は濡れ羽色。美青年なのに、口が遥かに悪い。
どうしてこんなところに通っているかと言うと……。