子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第7章 愛され過ぎて
江藤 彩音side
麻生 涼とは同期で、香港に行く時はあたしが行くかで、上司が揉めて、
タッチの差で営業成績のいい、麻生が行く事になった。
あたしは勝手に麻生をライバル視してたけど、当人はなんとも思ってないみたいで、
イライラすることも多い。
今では営業部長だし、勝負にならない。
最近のあたしのライバルは……。
「江藤さん」
名前を呼ばれて、視線をパソコンから上げた。
向かい側に座っている、きっちりメガネの桐生くん。
実は彼はよそから引き抜いて来た、キレ者らしく、仕事は常に完璧、成績も常に上位、
見た目はきっちりヘア、きっちりメガネ。
どちらかというと、チャラいタイプの男に引っ掛かるあたしからしたら、
嫌いなタイプ。
「…何よ桐生」
そう言うと、ハァとため息をつかれる。
「僕はあなたの年上であって、これでもこの仕事は長いんですけどね、先輩としてちゃんと接して貰わないと、部下に示しが……」
くどくど言う言葉をぴしりと遮る。
「何の用事かしら、桐生さん?」
あたしが苛つきながらそう言うと、メガネを押さえて、軽く咳払いをした。
「契約、おめでとうございます、あそこの社長とはちょっとした顔見知りで、綺麗な女性じゃないと話もしてくれない、困った人でして、部長が同行したと聞き、安心しました」
「あら、そうなの?」
今日契約した会社の社長は、気持ち悪いセクハラ親父で、
契約となると、更に気持ち悪い事を言うと思って、麻生にお願いしたんだった。
「ですが今後、そういった困ったお客様の場所に行く時は、わざわざ部長の手を煩わさずに、僕に声を掛けて下さい、そういうの得意なので」
ニヤリと人の悪い笑いを浮かべる桐生。
会社に戻るなり、自分の業務を慌ただしくこなす麻生を見て、
忙しいのに同行してくれたんだと、すぐに分かった。
会議に間に合うと、すぐに準備して、出て行ったけど、
桐生は周りの事も良く見ている。
「……そうね、今度からはお願いするわ」
ほっと息をついて、素直に言うと、意外そうな顔をして、
メガネが鋭く光った。
「時には素直なことも言うんですね?驚きました」
「はぁっ?ちょっと、あたしのことなんだと思ってるのよ?」