子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
待ち合わせ場所は、時計台の前。
ベタなカップルの待ち合わせ場所だ。
新しい遊びなのかな?
なんだか可愛い。
待ち合わせ場所まで指定した、涼くんのことを考えて笑ってしまう。
なるべくお洒落して、待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ時間は、15分前。
早すぎず、遅過ぎない時間だと思って、時計台の前に行き、
足が止まった。
真面目な顔をして、周りの視線を気にしながら、時々腕時計を見ているのは……。
「…真木部長…っ?」
会社では見せない、カジュアルな格好にドキリとして、
思わずそう、声を掛けてしまった。
「…え?…森下さん…?」
……信じられない、誠也さんだ。
戸惑いを隠せない誠也さん、あたしをじっと見つめて、
目を反らすように俯く。
「……どうして森下さんが?…俺は麻生に話があるからと、呼び出されて……」
「…えっ?…あたしは……、涼くんと待ち合わせでここに……」
……ハッとして、ケータイを取り出す。
すぐに涼くんに電話しようとして、ちょうどその涼くんから着信があり、
即座に通話ボタンを押した。
「涼くん…っ、どうして…?これは…っ、どうゆうことなの…っ?」
『……愛莉?……今日は俺は待ち合わせ場所には行けないから、変わりにお前は真木とデートでもしてもらえよ?』
……意味が分からない、どうしてそんな事を?
「どうして真木部長と…っ?…分からないよ、涼くん…?』
『今日1日、真木と過ごして、ゆっくり話をしろよ?……それで、どうしても俺と一緒に居たいのなら、……俺はお前にプロポーズする』
……ズキン、
胸の奥がきりりと痛む。
『……どうしても、真木と一緒に居たいのなら、お前はもう、帰って来るな、……昔のままの、幼馴染みに戻ろう?』
「……っ」
……何も言葉が出ない。
あたしの様子を見て、誠也さんがケータイを取り、
変わりに涼くんと話をしている。
「……俺はまた、君に嫌味でも言われるんだと思って、覚悟して来たんだがな?……そうか、本当にそれでいいのか?……もちろんだ、じゃあお言葉に甘えるとするよ?」
涼くんと何やら会話をする誠也さん、ケータイを切ったのか、
あたしに渡してくれた。