
子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
「やっぱり家族だから、一緒に暮らしたいでしょう?」
寂しそうに笑う、桐生ママ、
結婚したら同居しそうな雰囲気に、
はい、ダメ、
心の中でバツをつけた。
「あら、でも家には長男の零人がお嫁さんと一緒に住んでるから、結婚したら別居で安心していいのよ?」
「母さん、そういう話はまた、おいおいでも……」
桐生パパが口を出して、何故だかうちの両親まで一緒に笑っている。
「そうねぇ、うちの彩音もずっと一緒に住んでますし、一人暮らししたいなんて言いもしなかったから、家事がちゃんと出来るか不安でねぇ?」
お母さんがいらない話をしだした。
内心冷や汗をかいてしまう。
「あら、蓮司はうちの近所のマンションで一人暮らししてますから、家事は得意なんでやらせばいいのよ?どうも昔から好きみたいで」
「あら、まあ、良かったじゃない彩音」
いい加減イライラして来た頃に、やっと襖がガラリと開いた。
「……どうも、遅れて申し訳ないです、桐生蓮司です、今日はよろしくお願いします」
正座して、ピシリと一礼する桐生、
その姿は、眼鏡もなく、髪はお洒落な色気のあるウェーブ、
ピシリとした、センスのいいスーツ姿だった。
やっぱり眼鏡を掛けてない桐生は、格好良くて、ドキッとしてしまう。
あたしの向かい側の席に座る桐生、絶対わざと遅れて来たんだと思って、
じろりと睨み付けた。
「……今日はまた、一段と綺麗ですね?その着物は俺の為に?」
「遅れて来た癖に、良く言うわよ、お母さんに着せられただけです」
「こういう場では、遅れて来た方がいいかと思いまして、良く似合ってますよ?……脱がせるのが楽しみだ」
最後の一言は小声で言い、艶やかに笑っている。
和やかに両親同士の会話が弾んでいたのに、桐生の最後の一言が聞こえたのか、
一瞬、シンとしてしまった。
「あらっ、まあ……」
「蓮司……っ」
「お二人とも、お若いですし…ねぇ?」
咳払いと笑い声が聞こえる中、贅沢な懐石料理が次々と運ばれて来て、
堪えきれない雰囲気を壊すように、黙々とお料理を頂いて、
日本酒まで飲む両親達につられて、飲み慣れないお酒をグイグイ飲んでしまったんだった。
