
子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
食事が終わり、和やかに先に退散する両親同士に頭を下げて、
笑顔で見送って、二人きりになってしまった。
すぐにあたしの隣の席に移動してくる桐生、
「な…なによ…?」
なるべく冷静を装おって、桐生の近い距離感から、じりじりと離れるようにする。
「……どうですか彩音さん、俺と結婚して下さい」
「…はぁ?……嫌よあたしは、断るつもりだから」
「どうしてでしょうか?ちゃんとした理由が知りたいです」
「それは…っ、……こないだのことだって、あたし、怒ってるんだからね?」
こないだ、
会社であたしにエッチなことした癖に、イった瞬間、置いてけぼりで、
会社に一人残されたんだから、あんな状態なままで。
ふっと艶やかに笑う桐生、
あたしの頬に手をそっと乗せられた。
「あれは、さすがに会社で最後までは出来ないと思い、あれ以上あなたと一緒にいるのは、まずいと思ったからです、それとも最後までシた方が良かったでしょうか?」
そう言いながらも、距離が縮まり、唇が重なりそうになり、
慌てて距離を取り、頬に触れる手を払いのけた。
「…言い訳ないでしょう、会社で…あ、あんなこと…っ」
「では俺の何がダメなんです?……やはりまだ、麻生部長のことが、好きなんですか?」
「……はぁっ?なにを言って…っ、だいたい麻生には彼女がいるし、あんな人なんて…っ」
「あの日、俺も見てしまいましたから、だから泣いてたんでしょう?俺があんなことしたのも、それがあったからです、もっとじっくり紳士的に事を進めようと思っていたのに、彩音さんの前では冷静でいられない、…責任取って下さい」
また、距離が縮まり、あたしの頬に手をそっと乗せられた。
「責任って何が…っ?それってあたしのセリフでしょ?」
「喜んで責任取って結婚します、……ああもう、強情な人ですね、こうなってしまったら、既成事実を作ってしまいましょう」
あたしの帯が、いきなり桐生にほどかれてしまった。
短い悲鳴を上げるあたし、
しゅるしゅるという衣擦れの音がして、長い帯が畳の上に置かれていく。
……手慣れている?
「ちょっと、いい加減にしてよっ、着物なんて着付け出来ないんだからっ」
「……俺が出来ますから、問題ないです、母さんがお茶とお花を習ってますから、覚えてしまったんですよ?」
