子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
江藤彩音side
さっき飲んだ日本酒のせいか、
桐生が格好良く見えてしまう。
きつい着物から解放されて、一番苦しかった腰紐が解かれたのに、
……なんだかムカムカしてきた。
まさかあたし、酔っ払ったんじゃあ……。
そう自覚した瞬間、目の前がぐるぐると回り出す。
「……彩音さん?」
心配そうな桐生の顔を、うっとりと見つめて、ふわりとその胸に倒れ込んでしまった。
ぐったりとした体を桐生に預けて、焦ったような桐生の顔が視界に写る。
……変なの。
いつも会社では涼しい顔してる癖に、緊迫した声で、
何度もあたしの名前を呼んでいる。
「桐生……、あたし、あんただったら、幸せになれるのかなぁ?」
……麻生のことも忘れて。
桐生が忘れさせてくれる?
あたしがそう呟いたのか、どうかは分からない。
「もちろんです。むしろ俺以外の男では、彩音さんを幸せに出来ません、だからあなたは安心して、俺の胸で眠って下さい」
……こんな状況で、安心なんか出来る訳ないのに、
何か言おうとしても言葉にならなくて、瞼が重くてしょうがない。
そのままあたしの記憶はそこで途切れて、あろうことか、
桐生の胸の中で裸のまま、眠りこけてしまったんだった。