子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第8章 本当に好きな人
川合伊予side
朝、目が覚めたら、隣に麻生部長の姿はどこにもなかった。
……ひょっとして夢オチとか?
でも私のベットの上は、やけに生々しくしっとりしてて、
シーツも乱れていたし、
ゴミ箱の中には沢山のコンドームがあった。
もちろん、使用済みだ。
本当に私、麻生部長と……?
心の中で悲鳴を上げて、部屋の掃除をして休日を過ごした。
体の中に残る、エッチした後の気だるさ。
麻生部長の感触と熱い体温。
シャワーを浴びて、冷静に考える。
分かっている。
麻生部長は失恋して、酔っ払った勢いで、遊びなんだってこと。
誘ったのは、私の方なんだから……。
夕飯の買い物でも行こうかと、玄関のポストにある、郵便物を見る。
婚約者の名前と茶封筒、少し大きめだ。
首を傾げながら封筒を開けて、コーヒーを飲みながら、
中身を取り出す。
そこで私の手が、凍りついたように動かなくなった。
……婚姻届。
書いてくれと言われて、何度目かのデートの日に、
目の前で記入して渡したモノだ。
その後で書いてから、一緒に届けを出しに、市役所に行こうと言って、
なかなか休みが合わずに、そのままになっていたんだった。
婚姻届には私の名前しか、記入出来てない。
小さなメモが貼り付けてあり、
『休日もなかなか合わず、市役所に行けないのなら、あなたとは結婚出来ません、申し訳ありません』
そう、書いてあった。
……そっか、つまりはそういうこと。
不思議とそこまで、悲しくはなかった。
ただ、ショックではあった。
だって会社のみんなに言ってあるから、やっぱりデマなんだと笑われてしまう。
私は頭を抱えて休日を過ごしたんだ。