子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第3章 頭の中から離れない
会社に出勤して、誠也さんの姿を見つけてドキドキしてしまう。
「おはよう、体……大丈夫?」
「おはようございます」
誰もいない廊下で、相変わらずピシリとしたスーツが眩しい誠也さん。
優しい笑顔。
また、あたしの体を気遣ってくれる。
「良く考えたら、結構無理させたんじゃないかなと思って、ほら俺……しつこいから……」
恥ずかしそうな苦笑い、不安そうに揺れる眼差しに、笑ってみせる。
「そんな…大丈夫です、それどころかすごく…気持ち良くって…そのっ…」
……会社でなに言ってるんだろう。
慌てて口に手をかざして、恥ずかしくて顔に熱が集まった。
ほっとしたような表情の誠也さん、甘い笑顔にどきどきする。
「それなら良かった」
ふわりと抱きしめられて、誠也さんの体温にすっぽり包まれてしまった。
「あっ、誠也さん…?」
「……悪い、会社でこれじゃ、仕事にならないな?ごめんね、また後で……」
ハッとしたように体を離されて、誠也さんの体温が離れて、
寂しいと思ってしまう。
「……そんな顔しないの、何なら開いてる会議室にでも行く?」
「……えっ?会議室?」
耳元で甘く囁かれて、意味が分からずに聞き返した。
「嘘だよ……?また、後でね?」
意味深な笑顔で背中を向ける誠也さん。
首を傾げて歩いて。
開いてる会議室に何の用事でと考えてしまい、そういう意味だと気付いて、
ますます一人で赤面してしまった。
先に歩いて行く誠也さんの背中が消えて、営業部の廊下で、
涼くんにばったり出会った。
「あ……っ」
「よお、愛莉」
ちょうど営業部のドアから出たとこで、目の前に立ちはだかる、涼くんの広い胸に。
足を止めて、涼くんを見上げた。
何だか久し振りに出会ったような感覚。
いつも通りの彫りの深い顔立ち、派手な外見に懐かしい気分になった。
『そういう付き合いなら、いつでも大歓迎だけど』
飲み会でそう言っていた、涼くんの言葉を思い返す。
昔から何度も告白して、あたしの気持ちを分かってて、
そんなことを言うなんて。
……そんな人だったんだ。
「こないだの飲み会、真木にお持ち帰りされたんだって?みんなの噂になっている。……俺があんなこと言ったから、真木に大人にされたって訳?」