子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第3章 頭の中から離れない
涼くんの言葉に、体が氷ついたように動けなくなる。
噂になっている?
真木部長にお持ち帰りされて。
涼くんがあんなこと言ったから、真木部長に大人にされた……?
当たっている言葉だけに、何も言えない。
……でも、涼くんに言われたから、なんかじゃないのに。
……こんな、人だったんだ。
「涼くんに言われたからなんかじゃないよ……?」
やっとの思いで口にして、涼くんを睨み付けてしまう。
そんなんじゃないのに。
「否定しねぇの?」
スッと空気が動いて、涼くんの顔があたしの耳元に近付いた。
前屈みになり、あたしと距離を詰める涼くんから、後退りして離れた。
「……そんな表情出来るなら、今のお前なら付き合ってもいいのにな?」
どういうつもりでそんなこと言うのか、分からなくて、悲しくなる。
「あたしには、真木部長がいるから……」
「へぇ、身も心も、あいつのモンになったんだ?」
営業部のドアから、他の社員が出て来て、ドアの傍にいるあたしとぶつかりそうになった。
ふわりと涼くんに抱き止められた。
一瞬、至近距離で、涼くんの腕の中で見つめ合う。
「悪い、森下さん、小さくて分からなかったわ~」
「森下さん、ドアからふっ飛ばされるとこだったぞ?」
冗談ぽく笑う涼くん、あたしの体を下ろして、体を支えて立たせてくれる。
「ごめんな~、本当小さくて可愛いわ~」
「いいからお前は外回り行けよ?」
「じゃあ営業部長、期待して待って下さいね?じゃあね、森下さん」
頭を下げて、その人がいなくなり、何となく気まずい雰囲気で、
涼くんと視線が合う。
「じゃあな、愛莉」
ポンポンと頭を撫でられて、逃げるように総務課に向かった。
涼くんに撫でられた、頭が熱い気がして、頭を振って熱を追い出した。