子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第4章 熱くなる体
真木誠也side
「ありがとう」
お茶を持って来てくれた、愛莉にお礼を言って、びくびく震える肩を、
うっとりと見つめてしまう。
……仕事中だ。
営業部長である、麻生を呼んだのは、個人的な話だけじゃなく、
営業部の社員の体調や、不満な声を麻生に言う為だ。
麻生は栄養失調になる程の仕事の鬼、営業部では慕うモノも多いが、
同時に恐れられている。
以前はそこまで厳しい奴じゃなかったのに、そんなに出世したいのかと。
少し意外に思う。
……ピリピリしている。
営業部長になり、人の上に立つには舐められないようにと、
思っての事だろうが。
髪もきっちり分けるようになったようだし、昔のような、ちゃらけたイメージはなくなった。
ポケットからハンカチを出す麻生、額の汗を押さえて、
ハンカチと一緒に何かが落ちて、目が釘ずけになる。
女の子のシュシュ。
紛れもない、いつも愛莉がつけているモノだ。
俺が愛莉の髪を纏めたあの日、同じシュシュをつけてあげたんだった。
どうして、麻生が持っている。
「……落としたよ?」
テーブルの上に落ちたシュシュを手に取って、麻生に見せる。
「ああ、あいつの…返そうと思って、忘れてたな?真木に返して貰った方が早いか?」
あっさり愛莉のだと認めて、俺に返すように言う。
……どれだけ、余裕があるんだ?
シュシュを外すような状況って……?
考えたくないけど、考えてしまう。
だけど愛莉の性格からして、何かあればすぐに分かるだろう。
どうせ、麻生が勝手にちょっかいかけてるだけ。
分かってはいるが、ムカムカする。
出来るだけ、余裕の笑顔で微笑む。
「そうか、ありがとう、落とさないように、きつく縛れば良かったかな?責任持って彼女に返しておくよ?」
瞳の奥の少しの表情も逃がさずに、二人でにっこり笑い合ったんだ。