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子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます

第5章 俺の天使



麻生涼side


もの心ついた時から、一人だったような気がする。

母親はバリバリの看護師、今ではチーフという存在、

父親は医者だったのに、病気で呆気なく死んでしまった。

父親が死んで、今の家に引っ越した。

早く言えば、社宅で母親が働く病院の、社員と医者が住むマンション。

俺は冷めたガキだった。

祖母が英国の血が流れてるらしく、俺はクォーターで、

どこに行っても可愛いと言われて、外見を誉められたが、

誉められるのは外見だけで、愛想の悪い俺に友達も少なかった。

看護師の母親は、仕事に慣れるのがいつも必死で、

俺は母親の作ってくれる飯を、いつも一人で食べていた。

隣の人とは仕事で仲が良くなったらしく、夕食に呼ばれることがあっても、

母親がいない時は決して行かなかった。

森下夫妻が赤ちゃんを抱っこして、家に来た時に、

初めて愛莉に会ったんだ。

早産で未熟児だった愛莉、産まれた時は1980グラム、

保育器で暫く過ごして、やっと退院してから、家に連れて来てくれた。

その当初まだ5歳だった俺は……あまりの小ささに恐ろしくなった。


「……これ、にんげんなの?」

子犬とか子猫とかと、同じレベルで、生きてるのか心配になった。

……死んだ父さんを思いだす。

手の平も小さくて、怯える俺をみんなが笑った。

それが初めて会った愛莉の記憶。

お世辞にも可愛いとは言えない、猿みたいに小さな生き物。


小さな生き物は少しずつ成長して行く、歩けるようになると、

しょっちゅう家に来て、インターホンを鳴らし捲った。

何度も転けながら俺に付いて来て、抱きついて、きゃっきゃっと笑う。

俺は小さな愛莉が心配で、いつの間にか面倒を見て過ごした。

いつも俺の膝の上で乗り、眠りこける。

その寝顔が、天使みたいだと思って、どうしてだかいつも、泣きたい気持ちになった。

可愛い愛莉、小さくてすぐに転んでしまう。

俺が―――守ってあげなくちゃ。

未熟児で産まれて、成長も遅く、平均ギリギリラインかそれ以下で、

近所のガキにも苛められて、いつも助けていた。

外が恐いと気付いて、家で絵を描くばかりの愛莉。

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