
触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
佐藤君はどうにでもなれと思ったのか
ここまできたら、とベルトを外す
「お、いいね!調子出てきたんじゃない」
佐藤君が申し訳なさそうにパンツを下ろし
情けないそれを七瀬の綺麗な口に当てる
「や…」
差し出された大きいものに首をすくめて
声に出せない叫び声をあげる
ああかわいそうに
だから「嫌だ」っていう練習をしなくちゃいけなかったのに
誰にも教わらなかったんだね
それとも、本当はいやじゃないのかな
時々本当にわからないよ
「ごめん七瀬君…」
「っぐ…!」
薄い頬の皮膚で包まれたら
喉の動きと舌のザラザラした感覚
漏れ出す苦痛の声と熱い息
何より生暖かく滑る生き物の口内に
普段笑って、食べて、飲み込んで息をする
その口に無防備な生殖器を預けて
あわよくば噛み切られてしまう危険も顧みず
差し込んで突っ込んで
感情をもつ彼の口をまるで便器のように
自分の都合だけを考えて
ただ快楽を得たいという理由で
預けてしまう
その愚かさも醜さも
生臭さも
腰を乱暴に振ってむせかえらせてまで
息を詰まらせてまで快感を得る権利が君にあるのか
いやない断じてない
「はあ、やばい、七瀬君の…ああ」
佐藤、お前は自分のやってることが
どんだけ下劣かお分かりか
随分ご満悦だ
それはそうだろう
こんなに顔と体の造りの整った奴はいない
クラスの女よりよっぽどおかずになる
佐藤がここまで積極的になるとは予想外だ
見誤ったのか
おとなしい奴ほど秘めている野望が計り知れない
例えばそれがクラスの男子の口に突っ込んで
虐げることだったとしても
「目、見て、ああ…そう、いい顔だ…」
おい、何故そいつの言いなりになる
「はあっ、可愛いね、七瀬君…」
「んん、っぐっ、」
嗚咽に胸を貫かれる
ああなんという屈辱
他人の臭いものをあの小さい口に
俺は馬鹿だった
これじゃあ七瀬を見ている俺も苦しい
「イく…出るよ、七瀬君…」
佐藤が根元まで無理に押し付ける
七瀬が震える
息もできないで
喉仏がむせかえっても動かない
「んんっ!ぐ、うっ…」
「はあ…はあ…」
ああ、汚された
唇の端から白いのが溢れて
七瀬はきっと飲んでしまった
「…良い眺めだな」
良くない、最悪
佐藤が口から出した
七瀬は溺れたように息を吸い込んで咳をした
