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本気になんかならない

第11章 王子様

「家の者があんまり言うから高校に来てるけど、僕の未来って見えないんですよね。
僕は早く社会に出て自分を養える人間になりたいのに」

ええ?
王子が自分を養う?

「大学には行かないのか?」

「大学まで行ってしたいことがわからないんです。
こんな生徒の相手をしなきゃならない教師になんてなりたくないし」

「お前、わかってんなら困らせるなよ…
いくらお前の家が金積んだって、出席日数足らなきゃ卒業はできないんだぞ?
そんなこと、俺がご両親に伝えづらいじゃないか!」

「僕、もらわれっ子なんで、そういう気遣いはいりません。
僕がどうなろうとも、宮石の家は弟が継ぐので安泰です」

え?
もらわれっ子って、名門宮石家の王子様じゃないの?

それに、寡黙男がこんな長々と喋ってる…じゃなくて、その内容が気になって。

私は担任から渡されたプリントに目を走らせながらも、背中全体が耳であるかのように後方会話に集中してしまった。

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