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本気になんかならない

第28章 green flowers

その時、カチャとキッチン奥のドアが開いて
部長かと思いきや、制服男が入ってきた。

あ、知ってる…。

「ただいまー。あれ?
和史、昼間っから男連れこんでるの?
もー、千尋に言いつけるよ?」

「違うよ。バイトのコ」

いや、違うだろ。

「あ、宮石先パイじゃないですか。
おひさしぶりです」

「うん、ひさしぶり…」

うん、名前は知らないけど弓道部の後輩。

「颯大。今日も部活サボり?」

「今、テスト期間中!
俺がいつもサボってるようなふうに言わない!

それにしても、チーズのいい匂いするねー。
え?グラタン?俺のはあるの?」

ピアノ男が食事を再開したので、今もポクポクと煙を出すバットをハテナな顔で覗く後輩に、俺が答える。

「あるよ。10分くらいでできるから、
そのあいだに着替えておいで?」

俺のキッチンでも、俺の買いそろえた食材でもないけど、そんな遠慮はこの空間には要らないように思えて

了解をとらないままに俺は、余っていた皿のひとつを焼きはじめた。

「え?宮石先パイが?いいんですか?

やりぃ!俺もう、めっちゃ腹減ってきた!
マッハで戻ってきますので、お願いします!」

マットを敷いて、カトラリーを並べて、サラダを盛りつけて。

そんな俺を見たピアノ男は
「かいがいしいねぇ」とつぶやいた。

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