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本気になんかならない

第5章 レスポワール

再度のトイレで気持ちを落ちつけて、誰とも目をあわせないようにしながら教室に戻った俺は、静かに席につく。
そこで、後ろからあの男に声をかけられた。

「宮石、大丈夫か?」

「痛いよ」

「だろうな。炸裂してたから。
でも、お前が悪いんだよ。せっかくのバレンタインギフトを突きかえしたりするから」

「そんなことしてない」

「ロッカーの上に、ほっぽっただろ?」

ああ、、あれか…。

「俺のじゃないと思ったんだ」

今朝の俺は、今日が何の日なのかわかってなかったし。そんな俺のロッカーに女子力高めの紙袋って、もう間違いでしかないだろ?

「…それに、小浜もフッたのか?」

「それ誰?」

「さっき、図書室で渡されたんだろ?誰かがウワサしてたぜ?」

ついさっきのことなのに、もうそんなウワサが?

「え?んー?持ってない」

それにフったことになるのか?
いや、俺がフられたんだよ。
俺は男に手ぶらを見せた。

「そりゃ受けとんなかったら持ってないだろーよ。お前、あのコの何が不服だよ?めっちゃ可愛いじゃないか」

「だから、おかしいんだよ」

面識のない女子が、俺に渡すわけないんだ。

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