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好きだって気づいたとき

第10章 中学最後の夏休み

「もしお前がカンニングした事を反省してるなら、正直に話せばわかってもらえるって」


吉田がいつだかカンニングしてしまって、それをたまたまこいつらの誰かが見て、ゆすってるって事か。


「でも・・・」

「途中から来て口出して悪いけど、俺も遼太の意見に賛成だ。
こいつら卒業するまで、いや卒業してからもお前の事、ゆすりつづけるぞ」

「お〜お、遼太にゴマすりかよ。
途中から来て口出してんじゃねぇよ」

「吉田、よかったら俺が先生の所について行ってやるよ」

「・・・うん」


うなづいた吉田の腕を掴み、職員室行こうとした。


「余計な事すんじゃねぇよ」


仲間が俺の肩を掴んだ。
その手を俺は力いっぱい握った。


「イテテテッ・・・」

「吉田、職員室に行けっ」


吉田は俺達を気にしながら走り出した。


「おいっ、待てよ!」

「やめてっ・・・離してよ」


1人が吉田を追いかけ腕を掴む。
必死に抵抗する吉田。


「おいっ、逃げんなよ」

「嫌だ離してよ、離し・・・あっ!」


掴まれた手を振りほどいた吉田は、その勢いで階段3段くらい上から落ちた。


「吉田っ!」

「うっ・・・」


うずくまったまま動かない。


「コノヤロー、逃げるからだよ」


容赦なくうずくまる吉田に掴みかかる。


「うぅぅぅ・・・あぁぁぁっ!」


吉田は右手をおさえている。
よく見ると右手から血が流れていた。


「テメェ・・・コノヤロー!」


ここから記憶が途絶えている。
ただ遼太の叫び声だけは聞こえていた。


「知哉・・・知哉やめろっ」


気がついたのは保健室のベッドの上だった。




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