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Memory of Night

第7章 夏祭


 八月三十一日、夏休み最終日。

 外はカラッと晴れていた。

 宵は約束通り、十時頃を見計らって晃の家を訪ねた。

 相変わらずのシャレた家だ。洋風チックで、貴婦人の住んでいそうな家。

 庭は広く、真夏だというのに雑草らしきものは見当たらない。きちんと手入れされた、きらびやかな花たちが宵を出迎えていた。

 宵は晃の家を見渡しながら、呼び鈴を鳴らした。

 ほどなくして、晃が出て来る。


「いらっしゃい。宵」


 晃はドアを開けて顔を出すなり、宵を上から下まで流し見て、うん、と納得したように頷いてみせた。


「ちゃんと、言った通りの服装で来てくれたんだね」

「ああ、来たけど……」


 一昨日、晃から電話があった。用件は服装についてで、『上はノースリーブ、下は膝丈くらいまでの半ズボンで』というものだった。

 言われた通りにグレーのノースリーブと黒い半ズボンで来たには来たが。


「なんで服まで指定されなきゃなんねーの?」

「ゆかた着るのに都合がいいんだよ。さあ、上がって」


 晃はそう言って軽く笑った。

 そうして恭しくドアを開き、宵を家へと招き入れた。

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