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Memory of Night

第7章 夏祭


 リビングやキッチンなど、いくつかの部屋を通り過ぎ、一階の一番奥へ案内された。そこだけ他の部屋とは違い、豪華そうな装飾が施された襖になっている。


「今日はここで。うちは和室はここだけなんだけど、いつもはほとんど母さんが使うくらいなんだ。あの人茶道とか華道が趣味だから。どうぞ、入って」


 晃が襖を開ける。敷き詰められた畳の匂いが鼻をかすめる。

 だが、部屋に招き入れられ一番最初に視界に飛び込んできたのは、高級そうな緑ががった畳に広げられた、艶やかなゆかただった。

 色は深い青で、金の糸であさがおの刺繍が施されている。


「……これを、俺が……?」


 敷居のところに立ち尽くしたまま、呆れたような諦めたような微妙なニュアンスでつぶやいた宵に、晃は平然と言う。


「もちろん。他にもいくつかゆかたあるけど、宵には暖色系の色より寒色系の色の方が似合うかなって思って。まあ大丈夫だよ。多分何着せてもハズレはないから。宵綺麗だし」


 晃の言葉に、宵は一瞬目をしばたかせる。

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