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Memory of Night

第7章 夏祭


 仲間の一人が今度は宵の肩を掴む。

 その手を振り払うことはせず、代わりに男の頬をはたいた。


「……っ! この!」


 頬を押さえる男のすねを容赦なく下駄で蹴りつける。


「いってー!」


 男は派手につまづき、すねを押さえて転がった。


「て、てめー……!」


 その時だった。

 残りの男の後ろから、「おーい宵!!」と声が聞こえた。

 顔をあげれば、晃が何やら不気味なおめんを持って走ってくる。


「遅ぇよ!」

「ごめんごめん。……てゆーかなんの騒ぎ?」


 地面に転がる男を一瞥し、晃が言う。


「知らね」


 宵はそ知らぬ顔でそっぽを向いた。


「おい、てめーなんだぁ!?」

「この子の連れだよ。この子に何か用か?」

 晃は笑みを消し、瞳を細めてすごみのある声で言う。

 その表情には底知れぬ迫力があった。

 ナンパ男達は途端に顔を引き攣らせ、名残惜しげに宵を見たが、結局諦めてしぶしぶ去っていった。


「何かされなかった?」

「……別に」

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